授業NO.001
授 業:「みんなの体育館を絵でかざろう」
対 象:渋谷区立本町小学校 1〜6年生30名
日 時:2004年7月26日・27日
渋谷の自然をテーマに、こどもたちがカッティングシートを使って切り絵を作りました
講 師:秋山 孝(イラストレーター/1979年本学グラフィックデザイン学科卒業・本学グラフィックデザイン学科教授)

7月26日
1時間目(レクチャー:資料をもとにテーマと材料についての説明)

 真っ暗な教室に集合です。「渋谷の自然」って何があるでしょう。毎日見ているようだけど、鳥、花、木だけでもたくさんの種類がありますね。マティスの作品、大学生の作った切り絵の作品、その制作風景など、プロジェクターで映し出されたたくさんの絵や写真を見てイメージを膨らますことができましたか?今日は秋山先生の他に、中川ケミカルの方もいらっしゃいます。今回、みんなに材料としてカッティングシートを提供してくれた会社です。カッティングシートってどんなところで使われているかわかりましたね。銀行の看板、お店のショウウィンドウ、どれも街中でよく見かけます。

7月26日
2時間目(制作:アイデアスケッチ/イラストボードに下絵の制作)
 さて、図工室に移動して作りはじめましょう。まずは真っ白いボードに鉛筆で下絵を描きましょう。もう一度、じっくり「渋谷の自然」を思い出してください。下絵が完成したら、今日はここまでです。
7月27日
1時間目(カッティングシートの配布/扱い方の説明/イラストレーションの制作)
 カッティングシート24色が配布されました。昨日の下絵をもとにイラストレーションを作ります。みんなはじめて触れる材料なので、どうやって切ったり貼ったりしたらいいのか、中川ケミカルのプロの方に教えてもらいます。もし、困ったところがあったら、秋山先生やスタッフの大学生に聞いてみましょう。
7月27日
2時間目(イラストレーションの制作/講評会)

 まだカッターが上手く使えない人は、ハサミで切っても大丈夫です。さて、なんとか時間までに完成しましたね。では、講評会をしましょう。「渋谷の自然」のイラストレーションがたくさん生まれました。でも、みんなの作ったイラストレーションは、これで終わりではないのです。この中から10点の作品を体育館の大きな壁に飾りますが、ここからはもうひとつのプロセスがあります。中川ケミカルの方にお願いしてコンピューターと機械を使って、イラストレーションを大きくして壁画を制作します。完成が楽しみですね。
カッティングシートによる壁画ができるまで
1.作品の色を確認する。
2.作品をコンピューターに取り込み、アウトライン化する。
3.プロッターでシートに切り込みを入れる。
4.余分な部分をはがし、色ごとにシートを作成する。

9月19日
体育館の壁に加工済みのシートを転着する
 中川ケミカルを通じ、専門家の手をお借りして、大きくしたイラストレーションを体育館の壁面に転着していきます。
9月21日
完成(秋山先生からのお話/鑑賞)
 全体朝礼で校長先生、秋山先生からお話です。みなさん、体育館の壁を見てください。みんなが描いたイラストレーションが、こんなふうに完成しました。みんなが、こうしたら素敵な壁になるんじゃないかな・・・と考えて描いたイラストレーションがあったから出来上がりました。大きくなってびっくりしましたか?想像していた通りでしょうか。でも、自分だけだったら、ここまで大きなものにならなかったですね。デザインするって、みんなで協力し、専門家が集まって作り上げるものなんですね。デザイナー、イラストレーターって、こうしていろいろな人と関わって仕事をしているのです。
出前アート大学授業No.001 「みんなの体育館を絵でかざろう」
講師 秋山 孝(イラストレーター/1979年本学グラフィックデザイン学科卒業・本学グラフィックデザイン学科教授)

小さなイラストレーションと大きな壁画

 そばやさんのようなネーミング、「出前アート大学」を渋谷・本町小学校で行いました。子供達が描いた小さなイラストレーションが、小学校の体育館の大きな壁画を飾るという、小さくて大きな企画です。「渋谷の自然」というエコロジカルなテーマで子供たちが描いた絵は、プロセスを経てデザインという手品によって美しい壁画になりました。これは、小学校の授業では実現不可能な、小さくて大きな授業です。子供達にここで勉強してもらいたいことは、みんなが描いたイラストレーションが、専門家の力を借りると、自分だけでは想像できないほどの力が発揮され、目をみはるほどの名作が目の前に現れるということです。この「驚き」をポイントとして「第1回出前アート大学」の授業を試みました。
 その 「驚き」とは何か。1.自分が描いたものと全く同じものが、自分の体よりも大きな作品になった。2.専門家という特別な能力をもった人たちの協力を得る事によって、新たな力が生まれるということを知る。3.それを、人々に見てもらい、対話が生まれる喜びと驚きを体験する。4.制作には、プロセスがあるということっを知る。5.作品は長く残り、多くの人たちに作者の気持ちを伝え続けることができる。これら5つの「驚き」です。 表現の始まりは、さまざまな「驚き」から生まれます。そして、その感動から描かれたイラストレーションには独特なメッセージがあります。見る側の人たちは、その気持ちを読み取り、共感を抱きます。これがアートの原点です。その原点を表現するために、今回は、最先端の中川ケミカルのカッティングシート技術を駆使して完成しました。