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授業No.007
授 業:「とばないタコ」
対 象:東京都新宿区立四谷第四小学校 4年生・5年生・6年生(60名)
日 時:2005年10月6日・7日
飛んだらいいなぁ”と思うものの模型を制作し、その模型に風船を浮かぶまでつけて、凧のように空高く飛ばします。授業タイトルは、その名も「とばないタコ」。さて、どんな風景になるのでしょうか?
講 師:開発 好明(現代美術作家/1993年本学大学院油画専攻修了)
10月6日 5年生 8:50〜9:00
10月7日 6年生・4年生 8:45〜8:55
「開発先生の作品の話」(レクチャー)
 展覧会や作品制作で世界中を飛び回っている開発先生。いつもはどんな作品を発表しているのかスライドで見せてもらいましょう。誰でもピンを倒せるボーリング?全員が一等賞の表彰台?土を入れ花を植えて植木鉢にしてしまったお風呂?…こういった発想はどういう時に生まれて、作品につながっていくのでしょう?何かそのヒントが今日は見つかるかもしれませんね。
10月6日 5年生 9:00〜9:35
10月7日 6年生 8:55〜9:55 4年生 10:45〜11:55
「模型制作」
“飛んだらいいなぁ”と思うものを想像してみましょう。東京タワー、電車、おにぎり、自分、うさぎ…思いついたら簡単にスケッチします。






 イメージできたら、飛ばしたいと思ったものの模型を制作します。みんなが家から持ってきたお菓子の空き箱や牛乳パック、カップラーメンの容器、セロハンなどを使って作りましょう。

10月6日 5年生 10:50〜11:00
10月7日 6年生 9:55〜10:10
10月7日 4年生 11:45〜12:05
「風船に模型をつける」
 「風船を模型につける」模型が出来上がったら、風船と凧糸を取り付ける作業です。風船5個で一束になっているものを模型に貼ります。模型は浮かびましたか?浮かばなかったら風船をどんどんつけていきます。最後は、模型が飛んでいってしまわないように、凧糸を風船に結びましょう。

 



10月6日 5年生 11:10〜11:30
10月7日 6年生 10:10〜10:25
10月7日 4年生 12:05〜12:30
「風に乗った飛ばしたかったもの」
 「風に乗った“飛ばしたかったもの”」開発先生の合図で一斉に飛ばしましょう。凧糸をしっかり握って、離さないように作品を操ります。


 

 
“ふわっ”と作品が舞い上がった瞬間、大きな歓声が上がりました。上を見上げると、大きな空にみんなの作品と、色とりどりの風船が飛んでいます。みんなの表情がとても気持ち良さそうです。


「完成」
たくさんの風船を目の前にして、自分が制作した作品を空に飛ばすことは、おそらく初めての経験だったと思います。「飛ばしたかったもの」が空を飛んでいる風景を見て、みんなはどういうことを感じたのでしょう。
出前アート大学授業No.007 「とばないタコ」
講師 開発 好明(現代美術作家/1993年本学大学院油画専攻修了)

「とばないタコ」を終えて

 今回のワークショップは、僕自身が小学校の低学年の運動会で空に飛び去る、一個の風船の記憶が原風景としてあり、誰が離したか分からないその風船は、今も強く記憶に残っているのです。そのくらい子供にとって空に飛ぶ風船の魅力は大人の想像以上に魅力的な物なのだと僕は思っています。その風船を使い、子供達に通常飛ばない物を想像してもらい模型を制作してもらい、生徒にその模型が飛ぶまで風船を与え、空に飛ばしました。このワークショップには、一生経験できないような量の風船を使う経験をして貰うことと、もう一つは飛ばない物が空を飛ぶ様子を見て貰う事の2つの意味があります。子供にとって、一つの風船が僕のように記憶に残り続ける魅力的な物を自分のためだけに沢山の風船を使用する喜び、そんな記憶に残る喜びが、今回の授業で経験できたとしたなら、それだけで今回のワークショップは成功したと言えます。また、飛ばない物が風船の力を借りて飛んでる姿から、それぞれが柔軟な想像力を養ってもらえたらと思います。空に浮かんでいる人間を見たら、僕等は驚きます。それは現実的でないと知っているからです。しかし、子供はどうでしょう。幼稚園児が空に浮かぶ人間を見ても驚かないかもしれません。それは、彼等にとって非常識と常識との境が存在してないからです。今回のようなワークショップを通じて、子供達に既成概念を疑う事の大切さや面白さが伝わったとしたら、僕が学校に伺った事に意味があったのではと思います。