授業NO.011
授 業:「地球と遊ぶジャイロのおもちゃを作ろう」
対 象:長野県千曲市立五加小学校 5年竹組27名
日 時:2006年9月29日
いらなくなった自転車を使っておもちゃを作ったり、木村先生の作品を鑑賞・体験したりして、地球の力を感じてみましょう。
講 師:木村 崇人
(美術家/2003年東京藝術大学博士課程後期壁画修了)
9月29日
8:50〜9:10「ジャイロのお話」

 「ジャイロ効果」という言葉を聞いたことありますか?木村先生はコマを使って、説明してくれました。コマが回転している時は、倒れませんね。高速で回転しているものは、他からの力が働いても、倒れずに元の位置に戻ろうとします。これをジャイロ効果といいます。地球も自転しながら太陽のまわりをまわっていることで、ジャイロ効果が働いているのです。

 

9:10〜10:40「自転車解体」
 いらなくなった自転車を解体して、ジャイロのおもちゃに生まれ変わらせていきます。
6台の自転車は、小学校の前にある自転車屋さんで児童達がもらってきてくれました。
最初は、先生が解体の手順を見せてくれます。モンキーレンチ、メガネレンチ…見たことも使ったこともない道具の名前と使い方を1つ1つ説明しながら、みるみるうちに解体していきます。
さぁ、みんなもグループに分かれて解体しましょう!使い慣れない道具を扱いながら、みんなで協力して解体します。カゴ→ブレーキ→鍵→ライトと取り外し、前輪とハンドルだけのおもちゃに組み立てなおしたら、布やすりで錆びをとり、ラッカー薄め液で汚れを落とします。


10:40〜12:20「ペイント」
 さびだらけの自転車が、きれいなおもちゃに生まれ変わりました!最後にペイントして、世界に1つだけのおもちゃに仕上げていきます。
まずは白いスプレーで下地を塗ります。乾いたら、アクリル絵具でペイントしていきます。
普段使っている水彩絵具より発色がきれいなので、色んな色を試しながら、楽しく色を塗っていました。





13:45〜14:35「地球が感じている力」
 午後は、完成したジャイロのおもちゃで遊びます。グループのお友達に、勢い良くタイヤをまわしてもらって、自転車を持ちあげます。ハンドルを上下左右に動かすと、体が振り回される感じがしませんか?ハンドルを動かすことによって、他からの力が働くので、元の位置に戻ろうとしているのです。
地球が感じている力を今、みんなも感じています!
14:35〜15:45 「先生の作品体験」
 最後に、木村先生の作品を鑑賞・体験します。
日常で、発見したり気付いたりしたことを、楽しく体験できる作品に作り変えている木村先生。みんなが体験したのは、「星の木もれ陽プロジェクト」という作品です。木もれ陽が丸く映っているのは、太陽が丸いから…という現象に注目した木村先生。では、太陽が星型だったら木もれ陽の形は?と実験し、この作品が誕生したそうです。
舞台に星型のライトを設置し、壁に投影します。指を重ねて壁に映すと、指のすきまから、星の形をした木もれ陽が映りました!みんなの驚きの声が舞台を包みました。

■ おわりに
 ある時、木村先生が自転車の車輪を回していると、不思議な力を感じたそうです。調べていくと「ジャイロ効果」が働いていることが分かり、色んな人に体験してもらうおうと作品に転換していったそうです。
身近にあるものでも、注意して目を向け、立ち止まって考えると色んな発見ができるのだよと、木村先生は話してくれました。
出前アート大学授業No.011
講師 木村 崇人(美術家/2003年東京藝術大学博士課程後期壁画修了)

 「地球と遊ぶジャイロのおもちゃを作ろう!」

テーマ:廃材の自転車を利用して、地球の力を感じるおもちゃを作る

 廃材の自転車をゴミと見るか素材と見るかによって、自転車そのものの形を観察したり、利用方法を色々な角度で考える事ができる。ものの見方を変える事で日常の中で当たり前すぎて気にかけてない物事などに目を向け、発想豊かに感じたり創造したりする事ができるようになるきっかけになればと考えた。

感想:ワークショップの在り方を考える
これまで多くの小学校でジャイロのおもちゃを作るワークショップを行ってきたが、これほど時間をかけて内容の濃いワークショップを行ったのは初めてだった。これまでのワークショップでは、おもちゃの制作とジャイロ自転車のパフォーマンスのみ見てもらっていたので、美術家というよりはジャイロの人と言った印象が強く、私がなぜこのような作品を作っているのかという情報が子供達に伝わらずにいた。しかし、今回自分の作品全体のレクチャーをしたり、別のテーマの作品紹介などができたことで、子供達と『地球と遊ぶ美術家』として接する事ができたのではないかと思う。また、ジャイロシリーズの中から様々なタイプのパフォーマンスを実際に見せる事で、ジャイロというものに興味を持って自分たちの作品を楽しむ事ができたのではないかと思う。
私が制作する上でテーマとしている『地球と遊ぶ』は、今居る自分たちの環境を与えられた情報だけで判断せず、自分自身の体で感じることを大切にしている。生きた地球の現状に目を向けることが、日常の見方や、在り方を変えるきっかけになると考えるからである。木漏れ日の形が丸いことを観察した子供から手紙が来た。私のワークショップがきっかけで、身の周りを観察する目で見て、感じて、実験して欲しいと思う。この行為こそが『遊ぶ』ことであり、その行為の延長が地球に対する自分の在り方への変化につながることを願っている。