授業NO.013
授 業:「6年缶」ひっくりかえってふりかえる
対 象:東京都府中市立南町小学校 6年2クラス(20名)
日 時:2007年2月5日・6日
卒業を間近に控えた6年生。早川先生の制作した絵本『家缶』をヒントに、6年間をふりかえって思い出をぎっしり詰められる缶を作ります。最後には、みんなの缶を「缶(鑑)賞」します。お友達の意外な「6年缶(間)」に、ひっくりかえってしまうかもしれません!
講 師:早川 純子
(版画家・絵本作家/1997年本学大学院版画専攻修了)
2007.02.05mon.(6年1組) 06tue.(6年2組)
8:30〜9:00
「『家缶』の紹介」

 早川先生が手に持っているのは、早川先生が制作している絵本、『家缶』の主人公‘ヒックリー’と‘カエルー’の缶でできたおうちです。『家缶』には、主人公のおうちを再現できる、紙工作のおまけがついてきます。

9:00〜11:50
「6年缶の制作」

 次に見せてくれたのは、絵本のおまけと同じ形に型抜きされた白い紙です。型抜き工場の方が、授業用として特別に作ってくれました。


早川先生が、できあがったパーツをみんなに見せながら、作り方を説明します。
さぁ、自分の席に戻って組み立てましょう!パーツをペリペリッと切りぬき、木工用ボンドで組み立てていきます。


組み立てられた真っ白な缶に、サインペンやコピックを使って絵を描いていきます。「6年間の思い出でなくてもいいよ、今日のことでもいいし…。」早川先生がそっとアドバイスすると、何を描こうか悩んでいた児童の顔もパッと明るくなりました。集中して、真剣なまなざしで制作している児童もいれば、早川先生やスタッフとおしゃべりをしながら、楽しそうに制作している児童もいました。





11:50〜12:20
「缶撮(かんさつ)」

 制作した缶を、校庭、放送室、図工室、理科室など、小学校の好きな場所や思い出の場所を背景に、撮影します。  



02.06tue
13:40〜14:35
「缶(鑑)賞会」

 昼食後、6年生全員が集まって発表会をします。
スクリーンに映し出された缶の写真を見せながら、「これは〜缶ですが、中身は〜です。」と、一人ずつ発表しました。お友達のユニークな発想の6年缶に、笑いや拍手がおこります。
14:35〜15:15
「『家缶』制作についてのお話」

 『家缶』の絵本が完成するまで1年半かかったこと、絵本を作るには編集者や印刷の職人さんが関わっていて、絵本作家1人ではできないこと…早川先生から絵本制作についてのお話がありました。
「絵本って読むとすぐ読み終わっちゃうけど、作るのにはすごく時間がかかっていてびっくりした!」児童の声が聞こえてきました。

2007.03.02fri.
10:45〜11:30(6年1組) 11:35〜12:20(6年2組)
「缶(完)成会」

 制作が途中だった児童が多かったので、図工の時間を使って引き続き制作をしました。1ヶ月後、「缶成」の報告を受けて、再び小学校へ行きました。
順番に、早川先生に缶成した「6年缶」を見せて、中身を説明します。児童は照れながらも、嬉しそうな表情をしていたのが印象的でした。早川先生も楽しそうでした。
そして最後に、早川先生から一人一人に向けたメッセージカードのプレゼントがありました!

 

協力
株式会社ほるぷ出版、共同印刷株式会社、有限会社岡安紙工、
ペーパークラフトデザイン/坂 啓典


出前アート大学授業No.013
講師 早川純子(版画家・絵本作家/1997年本学大学院版画専攻修了)
 

「6年缶」をふりかえり

当初授業は版画でと考えていましたが、実際に小学校を見学し、先生方のお話を聞くと、とても美術等の授業に熱心で、出前の授業も一回で終わりではない、充実した内容を希望していること。またなにより、人とのつながりを大切にしている学校でした。
そこで授業がある頃に出版予定の絵本の付録を利用しようと思いました。この絵本は出てくる「缶の家」を付録のペーパークラフトで組み立て遊べる趣向になっており、お話のテーマは“ひっくりかえる”です。対象が卒業間際の児童なので題して「6年缶」。6年間をふりかえり各
自の缶を作り、校内の思い出の場所に置き写真をとれば、絵本の中のお話ともリンクすると考えました。なにより児童がどんな缶を作るか見てみたかったのです。また制作中の絵本を取り上げることで、本を作る過程や、ものを作るって、いろんな人が関わってできるだよ〜。ということも身近に感じてもらえると思いました。
 児童の作った「6年缶」も、またその写真も予想以上に愉快なものでした。事後授業では、缶成した「6年缶」を一人ずつ見せてもらう機会を得ました。缶の中には部活動や学芸会、遠足、日常の思いでや好きなことがぎっしりと。缶を手に恥ずかしそうに説明する児童の顔や、そのお話はどの子もキラキラしていました。
 今回使ったペーパークラフトの準備には、ほるぷ出版編集の中村さん、共同印刷の渡辺さん、岡安紙工所の岡安さん、ペーパーエンジニアの坂さんなどの協力がありました。また授業実施の一週間前にペーパークラフトが用意できるというギリギリのなか、根気よく支えくださった事務局の田中さん。そして当日もかなり無理のある時間配分、内容をスタッフや理事の方に助けられ、小学校の先生方にも臨機応変な対応をいただきました。
 そして府中南小学校の6年生のみなさん、楽しい時間をありがとう!(今は学年がひっくりかえって1年生ですね!)小学校の思い出を今後ふりかえるときに「6年缶」が少しでも役にたてたら、こんなにうれしいことはありません。