授業NO.015
授 業:「木漏れ日のトンネル/光の体験」
対 象:目黒区立烏森小学校5年生40名
日 時:2007年6月28日
2007年度最初の授業は、目黒区立烏森小学校の5年生40人と行いました。講師は美術家の大竹敦人氏(1997年東京藝術大学大学院油画修了)です。児童たちは、理科や図工で光を題材にした授業を経験しており、さらに内面に響く光の体験をしてもらいたいと依頼がありました。今回は、ピンホールカメラの原理を体感できる作品を制作します。どんな光の体験が待っているでしょうか?
講 師:大竹敦人
(美術家/東京藝術大学大学院油画修了)

2007.06.28. Thu.8:50〜10:15
「トンネルのユニット作り」

 大竹先生が今日の授業について説明します。目の前にある、たたみ一畳ほどあるダンボール板を使って、みんなでトンネルを作るとのこと。その後は何が起こるかお楽しみ。ヒントは「光」だそうです。
5人ずつグループに分かれて、トンネルのユニットを2個作ります。ダンボール板を5枚重ね合わせて、両面テープとガムテープ、光を遮断するパーマセルテープを貼り、二等辺三角形のユニットを制作します。自分よりも大きなダンボール板に、児童は悪戦苦闘している様子です。



10:15〜11:15
「ユニットの連結」

 全部で16個のユニットが出来上がりました。校庭に運びましょう。グループ全員で協力しながら、1つずつ運んでいきます。高さや奥行きが1m50cmもある大きなユニットなので、5人で運ぶのがやっと。校庭に運んだら、トンネルのユニットを連結し、長いトンネルにしていきます。黒いカーテンを、入口と出口につけたら完成です!



11:15〜12:00
「光の体験」

 いよいよトンネルの中に入ります。蒸し暑くて真っ暗な空間に、児童は興奮気味で、歓声がやみません。スタッフからわりばしを配られ、1人1本ずつ持ったら「開けてー!」の掛け声とともに、トンネルの側面に穴をあけます。
すると、トンネルの中にすっと光が差し込んできて、外の景色が反転して映りました。みんなが勉強している校舎、風に揺れる木々、トンネルの外にいる人たちも!新たな発見と驚きに、トンネルからなかなか出てきませんでした。やっと出てきた頃には、汗がこぼれ落ちていました。






12:00〜12:25
「ピンホールの原理」

 ミーティングルームに移動して、なぜ外の景色がトンネルの中に反転して映ったのかを大竹先生が説明します。なぜモノが見えるのかや、光の性質も交えて丁寧に話してくれました。理科の授業で習った光の原理が、今回の授業で体験できたのです!この原理がアート作品に変身するのですね。最後には、大竹先生の代表作品である、風景を写したガラス球も見せてくれました。


■おわりに
 巨大トンネルが校庭に出現し、他の学年の児童や隣の保育園の園児も興味津々だったようです。お昼休みには、順番待ちのため長蛇の列ができていました。


「子ども達と光の体験を通して」
講師 大竹敦人(美術家/1997年東京藝術大学大学院油画修了) 

 

「木漏れ日のトンネル/光の体験」と題した烏森小学校でのワークショップは子ども(小学5年生)が対象で、彼らの記憶に美しく残る体験を創り上げることを目指して、光と闇そして空間を使って身体に訴えかける仕組みを考えました。
実施当日は梅雨の時期にもかかわらず天候に恵まれ、青空のもと校庭の芝が美しく輝き、色彩に溢れる風景が舞台となる最高の条件が整いました。子ども達には何をするのか事前の説明などは一切避けて、感動をより純粋なものなるよう努めました。全長25メートルの闇のトンネルに40名の子ども達が一斉に穴を開け、トンネルの中に外の風景が映っていることに気が付くと大きな歓声が上がりました。その声を聞いて子ども達の記憶に残る体験を与えることができたと実感しました。
私の考える美術家の活動とは作品制作や発表といった研究活動だけではなく、ワークショップなどの教育活動を通して多くの人々へ「美術への関心」や「美の在り方」などを伝えることも重要な仕事だと思っています。中でも出前アート大学での授業は、子ども達と向き合い伝える作業がとても楽しく、私自身「夢」を感じる特別な時間となりました。