授業No.033
授 業:「大宇宙学芸会」
対 象:世田谷区立花見堂小学校 5〜6年生32名
日 時:2010年6月23日
今年度最初の授業は、映像作家の松本 力氏(1991年本学グラフィックデザイン卒業)を迎え、世田谷区立花見堂小学校の5〜6年生32名を対象に開催しました。小学校の体育館に突如現れた巨大な「円盤型宇宙船HANAMIDO号」。この宇宙船の中で、未来の自分になりきって、仕事をしたり、楽しい学芸会を開きます。なりたい自分を演じると、今の自分に足りないことが見えてくるかもしれません。それぞれの夢に向かって、今、何をしていけば良いのかな?
講 師:
松本 力(映像作家)

2010.06.18 fri. 15:20〜15:30
「プレ授業」
授業数日前に松本先生が小学校を訪れ、未来の自分になりきって「大宇宙学芸会」を行うこと、当日までに準備して欲しいことを児童に伝えました。児童ひとり一人に辞令書を渡し、その中には宇宙船の搭乗員として設計技師、航海士、医師、食の担当(料理人、菓子職人、パン職人)、キャビンアテンダント、学芸会の台本作り担当(プログラムディレクター、エンターテイナー(あそび担当))、エンターテイナー(音楽担当))という7種類の役割に分かれた任務が書かれています。内容は宇宙船内でお仕事をすること、大宇宙学芸会で自分の夢を発表することです。役割分担は小学校50周年記念誌において、児童が宣言した夢を参考に決定しました。

 

2010.06.23 wed. 08:45〜09:30
「授業のテーマ説明、宇宙船HANAMIDOと任務の紹介」
図書室で授業の説明が終わると、松本先生が宇宙船HANAMIDO号のオリジナルテーマ曲を、アカペラで歌ってくれました。突然のサプライズに、緊張気味だった雰囲気が一気に和みました。その後、体育館へ移動し、巨大な宇宙船と対面です。各担当グループに分かれて、宇宙船での仕事、学芸会の出し物の準備を、リーダーとなるアシスタントスタッフと一緒に進めていきます。

 


 

09:35〜10:20 
「グループ制作、宇宙船完成、大宇宙学芸会の準備」
実は宇宙船HANAMIDO号は未完成でした。そこで設計技師のグループが壁や窓の取り付けを行い、宇宙船を完成させました。宇宙を巡る地図を作成するのは、航海士のグループ。松本先生の代表作である、絵巻物マシーンを使って、宇宙光景のアニメーションも作成。医師のグループは、宇宙で長生きするための健康体操を考案。食を担当する菓子職人、パン職人、料理人の児童は宇宙食の開発をしました。キャビンアテンダントは、制作中のタイムキーパーや学芸会の進行を英語と日本語を駆使して、アナウンス。そして大切な学芸会の内容を整え、段取りを担当したのはプログラムディレクターのグループ。各グループの出し物を調べ、学芸会を構成します。エンターテイナーのグループは、宇宙での遊びを考えました。音楽担当のグループは、学芸会のバックミュージックを作ったり、手作りしたマラカスをみんなに配って、学芸会を盛り上げます。それぞれが得意な分野で、みんなで協力して、楽しい大宇宙学芸会を作り上げていきます。


 

10:40〜12:15 
「リハーサル、大宇宙学芸会」
いよいよ大宇宙学芸会のはじまりです。暗くなった体育館の中に、松本先生が準備したオープニング映像が宇宙船の天井と側面に映し出され、とても幻想的です。グループごとに前に出て、宇宙船で行った仕事と、自分の夢を発表します。一輪車に乗ったり、歌を歌ったり、夢の話をしてくれたり…いつもならちょっと恥ずかしくて言えない自分のことを、未来の宇宙船の中なら不思議と伝えることができました。終わりに松本先生から挨拶がありました。と、突然照明がチカチカ点灯しはじめ、宇宙船に異変が起きました。いますぐ宇宙船から脱出をしないと、宇宙船が爆発してしまう緊急事態が発生です!船外に準備されていた小型艇に乗り込んで、全員脱出をし、無事にひとり一人が未来への船出に旅立ちました…。こうして「大宇宙学芸会」は幕を閉じました。




 

13:00〜13:20
「松本先生の作品紹介」
お昼休みに松本先生の作品鑑賞会を図工室で行いました。机には分厚い原画ファイルが何冊も置かれ、原画を元に一コマずつ撮影されたアニメーションを鑑賞しました。画面の中いっぱいに、鉛筆などで描かれた絵が力強く動きます。授業全体を通して、松本先生の世界観を体験しました。

 

 

 


■おわりに
小学校の高学年にあたる5〜6年生に向けて、夢に近づくための原動力をつけてもらいたいと願い、授業を行いました。夢を描いて進むのではなく、夢が叶った未来から帰ってきて、今の自分にやるべきことを教えてしまおう、という逆転の発想が込められています。その後、宇宙船は解体されてしまいましたが、後日、松本先生から宇宙船の仕様書が児童の元に届けられました。もう一度再現することは大変ですが、仕様書を見て、想像力を使って宇宙船に乗り込み、いつでも“夢の叶った自分”に会いに行くことができるのです。
 


「大宇宙学芸会」を終えて 

 松本 力(映像作家/1991年本学グラフィックデザイン卒業)


子どもの頃の絵や工作から、自分の道を信じ続けなければならない思いがあるから、アニメーションや絵巻物マシーンというものを制作している。私の心の中に未来と逆向きの時間もあって、さようならをいってからその出会いを想う。人にはそれぞれの時間が流れていると教えてくれた人がいた。その流れの中で交叉する時、未来から戻ってくるようにずっと考えてきたことや今の気持ちを子ども達に伝えたかった。多くの考えと作業を重ね、木と段ボールと布とそこに映される映像の光の宇宙船に乗り「大宇宙学芸会」という時間を共に旅した。私は変な歌も歌ったし、ハプニングとして宇宙船に重大なトラブルが発生という形で、ハーモニカの警報音と七色に明滅する船内から、滑車とロープと台車、空き缶ローラーの宇宙艇で脱出、Good Luck! よい人生を、と皆に告げた。何かが始まる前も終わっても、自分で考えることが何時でも何処でも何でも始まってほしい。