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失われた部族
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私は今、東京で暮らしている。この都市での自分の生活と、自分の今の作品「失われた部族の遠隔感応映像」というストーリーアートとの関係を探る一つの手段として、 日常と幻想の狭間にある都市空間、東京に舞台を置くバーチャルリアリティ(仮想現実)物語の構築に取り組んでいる。 この作品は現在のところ、オリジナルの歴史性を有する写真、スティルビデオ、動画などの映像素材を使って、それらを静止画およびアニメーションのプロセス内蔵型3次元画像モデルの上、あるいはその内部に配置するという形式をとっている。

都市空間群は私が憧れる物語のタイプによく似ている。つまり、複雑で、多方向、多目的、誘いつつ走り去り、繰り返しながら知覚を再構成していく、そんな物語に。特に東京は私にそのような作用を及ぼす。果てしない都市景観の圧倒的かつ平和的な粉砕された断片や、継続しつつもはかない私のイマジネーションの細部たち、そしてそれらに繋がる裏返しのデジャヴュとでも呼ばれるべき感覚(自分が今まさに忘却しつつあるその対象の前に立っているという感覚、そして実際のところ、私はいつもそのことには気づかないでいたのだが)に対する格闘など、そんなものたちの間に迷い込んだ私のような人間にとっては、東京は特にそのような効果を及ぼすのである。前述の物語化される前の記録空間にも、これらの特質が共有されている。それに惹かれるからこそ、その中に東京を再構築しようとしているのだ。

概して言えば、私が物語性のある仮想現実空間を探索中である彼の人の創作は、地域的な日常の瞬間に基づいており、その一瞬一瞬が、膨大な特殊性にも関わらず、歴史と幻想からなる無限の領域を包含するかのような拡大された細密さの世界へと導いてくれるのである。今の東京の映像、空間、場所などの細部に根差したものでありながらも、この物語の世界には、「失われた部族」が切望する、地球的で百科全書的な物語性のすべてを包含できるだけの広がりがあるのだ。

デビッド ブレア


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