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情報の生態系
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情報のエコロジーという考え方は、地球上の生命体と環境の中に生態系が認められるように、情報の世界にも同様の仕組みが存在するという仮説に基づいています。 春になれば多くの植物が一斉に花をつけます。夏には様々な昆虫が活発に活動します。秋になると木の葉が紅葉し、冬の間カエルは土の中で冬眠します。全ての動植物がその環境からの情報を元に営みを続け、彼らもまた情報を発信しています。ハチやアリが独自のコミュニケーションメディアを持ち、餌の存在や危機の到来を察知し組織的に行動することはよく知られています。ウイルスの活動から人間の社会経済活動まで、全ての生物は情報によってその生態系を維持しています。

地球表面は、いわば目に見えない情報スフィアに取り巻かれ満たされているのです。 われわれの曽祖父母達は、渡り鳥の行動を見て季節の変化を的確にとらえ、山に掛かる雲の形や空気の臭いで翌日の天候を予知することが出来ました。100年前には情報の生態系が身体感覚の中に存在していたのです。ところがいまでは、毎朝気象衛星からの情報に基づいて専門家が判断する天気予報によらなければ、われわれはその日の天気や気温さえも知ることが出来ません。

私たちの体を離れた情報網は、もはや生態系とは無縁の、複雑で自己増殖する独自の世界を形成しつつあります。 資源とエネルギーの消費削減に取り組む中、情報だけが無制限に拡大再生産され、消費され廃棄される事によって、情報環境は汚染され続けています。情報の生態系が破綻する事によって、それを頼りに行動するわれわれの生態系そのものに深刻な影響が起きないうちに、情報環境のリ・デザインに着手しなければなりません。

益田 文和


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