CO-CORE


「クリティカル・ノート」について

1.
本申請における教育ツールとして開発されるのが、「クリティカル・ノート」である。大学院で展開されている授業すべてのツールとして機能し、「Art & Design 国際講評会」へと向かっていくための下準備として必須のシステムである。


2.
授業ツールとしての「クリティカル・ノート」


(ア)2008年5月にver.1.0として予定されている「クリティカル・ノート」は、授業ツールとして最大限に活用できるよう、「誰にでも簡単に、すぐに使えて、すぐに親しめる」よう配慮して設計されている。マニュアルを作成し、適時説明会などを開催する。


(イ)各学生は、ひとつのホームを持ち、授業ごとにその中で対応する。


(ウ)同じく、各教員もひとつのホームを持ち、授業ごとにその中で対応する。教員は、授業内の学生に対し、「スーパーユーザー」的な権限を持ち、許された範囲内で、授業内の指導学生のページを閲覧することができる。


(エ)学生は日常的にこれを活用し、個人の書棚、デジタル・フォルダのような感覚で、スケッチや作品をアップロードしていく。ほおり込んでおく、という感覚に近い。厳密な整理整頓は後でよく、とりあえずここに「日常的にアップする習慣」を身につけることを優先している。その上で、授業に対応させたり指導教員とのやり取りのために、データを整理する。


(オ)教員にとっては、課題などの成果をここに集めることもできる。担当している学生たちのページをチェックすることで、進捗状況を簡単につかむことができる。


(カ)また、指導のための情報をやり取りもできる。たとえば、夏期休業中などの期間に、学生のための研究資料の追加を思いついた教員は、自分のページに情報をアップ、それをある特定の学生に向けて公開することもできるし、公開エリアを広げて、クラス全体に対し、公開することもできる。


(キ)教員は、同じ研究領域内であれば、他の授業の学生の作品を閲覧する権限を持つ。同一研究領域内でも、全学生の作品を把握することは容易ではなく、結局、教員も講評会ではじめて知る、ということが少なくない。こうした事態を未然に防ぐための工夫である。


(ク)「クリティカル・ノート」は、授業の担当教員と一学生が公開し合っている、という最小限のコミュニケーション状態をデフォルトとする(ユーザーレベル、公開レベルについては後述)。


(ケ)授業の中で活用している間にも、学生の作品は増え続ける。教員は、それらをより授業ベースで活用したい場合、いつでも「現状」を保存しアーカイブすることが可能である。アーカイブを振り返ることで授業の記録と、学生への適正な評価を与えることができる。


3.
デジタル・ポートフォリオとしての「クリティカル・ノート」


(ア)美術、芸術、デザイン教育において、作品、研究のアウトプットは何よりも重視される。またそこに至るプロセスを、教員と学生が共有することも、よりよい成果を導くために必要なことである。


(イ)「クリティカル・ノート」は、授業の中で展開される様々な教育プロセスをひとつずつ記録していくフォルダであり、作品が一定数以上収められた時点で、デジタル・ポートフォリオ、作品集としても活用できる。


(ウ)「クリティカル・ノート」は大学院で展開されているすべての授業で活用することができる。教員は、授業ごとに管理でき、また学生は、個人用のページ(フォルダ、ポートフォリオ)を持ち、それを自由に活用できる。作品を収録したり、その前段階のアイデア・スケッチ、研究のためのメモなど、データ形式を守れば、ほとんどのヴィジュアルイメージを収録しておくことが可能で、またそれらを整理整頓することもいつでも自在にできる。


4.
コミュニケーション・ツールとしての「クリティカル・ノート」


(ア)学生は、作品を収録するほか、個人の経歴、受賞歴など、プロフィールを記載できる。また、作品、創作、研究に対する関心、姿勢、総括なども文字によって自由に表現できる。


(イ)ユーザーレベルを設定することで(後述)、最終段階では、協定校間で国際的に公開し合うことができる。それらを自由に検索(後述)することで学生は近い研究領域の作品を閲覧でき、必要に応じて、先方へコメントを送ることができる。それらはすべて記録され、第三者が閲覧することもできる。


(ウ)こうした閲覧は、「Art & Design 国際講評会」本番へと準備を進める段階で、事前に学生間のリレーションシップを形成できるものと期待されている。また、事前に参加者双方が作品を知っておくことで、「Art & Design 国際講評会」はより高い関心と教育的効果を上げることができるものと思われる。


5.
使いやすさのための工夫


(ア)静止画像に関しては、現在ホームページやブログなどで使われているほとんどのデータ形式に対応する。動画に関しては、2008年5月の段階では扱わない。


(イ)いつでも手元のPCから閲覧でき、アップデートしたり、整理できる。


(ウ)文字情報などもいつでも変更できる。


(エ)文字検索機能を活用できる(4カ国語対応)。自動翻訳は行わないものの、翻訳のためのツールをつける予定。


(オ)教員にとっては、授業での指導の履歴をたどりやすく、節目ごとの総括に活用できる。節目ごとに内容をアーカイヴすることができる。


(カ)あるいは、逆説的だが、教員が積極的に活用しない場合でも(研究領域によってはこういうことも起こり得ると想定している)、学生は問題なく利用できる。


(キ)授業、研究領域の中では、学生、教員双方とも、自由自在に使うことができる。これは、ノートにランダムに書き込んだり、どこのページに何を書いてもいいという状態に似ている。


(ク)その上で活用後数ヶ月目には、可能な学生、授業から、「キャンパス全体」に徐々に公開していく。その際には、上記のような「書き散らかした」状態ではなく、ある程度すっきりと整理された状態で公開される。何を公開し、何をしないのかは、学生、教員が決定できる。「キャンパス全体」への公開の後、協定校間への公開に踏み切る。この際、学生のページが整理され、また、文字情報は部分的ではあっても外国語対応となっている状態が望ましい。検索のためのキーワード設定も、母国語に加え、英語などの併記が望まれる。


(ケ)前後するが、この「クリティカル・ノート」のユーザーインターフェース、外観デザインなどに関しては、できるだけ学生の声を集め、彼らにとって使いやすいものを、全体で作り上げていきたいと考えている。学生が、直接デザインなどを制作する場面もあると想定している。ただし、「第一回CO-CORE研究会」で報告した「5月中旬には遅くても始動」というスケジュールを最優先する。


6.
安全のための工夫


(ア)全員が、著作権、情報操作に対しての状況を理解し、参加の許可を得る。


(イ)ID、パスワードを用い、運営面の安全性を確保する。


(ウ)授業内では教員は「スーパーユーザー」として、運営責任と権限を持つ。


(エ)公開レベルを設定することで、授業内での活用と、公開時の見せ方に変化を付ける。


(オ)授業内で使用しているときと、公開時のアドレスを異なるものにする。


(カ)ハードウェアキーなどの使用については、「日常的な使いやすさ」を損なう恐れもあるとして、採用を見合わせた。


7.
公開レベル、ユーザーレベル(パーミッションレベル)について


(ア)レベル1・・・授業内において、一学生と、担当教員の二者のみで公開し合うレベル。これをデフォルトとする。文字検索などの機能を使用できる。メッセージを送信し合える(以下同様)。


(イ)レベル2・・・授業内において、履修学生全員が、それぞれのページを訪問し、閲覧できる。


(ウ)レベル3・・・領域内の全授業において公開する。


(エ)レベル4・・・本学キャンパス内において公開する。


(オ)レベル5・・・「Art & Design 国際講評会」参加者間で公開される。


(カ)1〜3までは、授業に直結した使い方が強く、4〜5では、不必要と思われる要素は整理し、隠すことで、より理解を促す編集上の工夫を行う。例えば、作品数が、数百あるよりも、数をしぼることで全体像はわかりやすくなる。したがって、1から5に向かうに従って、公開作品数は減っていくものと考えられる。反面、文字情報などの多言語化が進む。


8.
「クリティカル・ノート」よりも会話を促進させるWikiの積極利用


(ア)「クリティカル・ノート」は、デジタル・ポートフォリオ、あるいはデータベース的な機能を持っているため、どちらかというと、ブログやチャットのような使い方をしにくい、という指摘もある。


(イ)この点については「クリティカル・ノート」内で解決するよりも、授業内でのコミュニケーション促進のために、もうひとつ、シンプルなWikiを制作することでより良い状態を生み出す。必要に応じて、授業内での使用を推奨する。2008年4月1日、始動予定。


(ウ)「クリティカル・ノート」の使用感、意見などを集めるためのツールとしての活用も想定している。


9.
「クリティカル・ノート」Ver.1.0からVer.2.0へ


(ア)2008年5月の始動後、しばらく運営して声を集めた後、必要に応じて柔軟に修正していく。


(イ)こうしたフィードバックを進めていき、年度内に完成度を高めたVer.2.0へと結びつける。


(ウ)全体設計像に関しては、この修正の進め方を見ながら、最終的なものを仕上げ、公開する。


2007年度活動報告書に、いっそう詳細な説明があります。あわせてご覧ください。



2007年度活動報告書より


異文化相互批評が可能にする高度人材育成
Art & Design 国際講評会
クリティカルノート
クリティカルノート(研究会)