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文部科学省 平成19年度大学教育改革プログラム合同フォーラム 

大学院教育改革プログラム分科会報告書

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開催日:平成20年2月10日 13:15 - 15:00
参加者:高橋正(多摩美術大学美術学部生産デザイン学科教授)

選定委員の方向と選定校の事例報告

選定委員挨拶

実施状況


 平成19年度は人社系の採択比率が圧倒的に多かった。申請124案件のうち53件の採択で42.4%の確率、理工農系は申請169案件のうち採択53件、医療系は申請62案件のうち採択20件という結果であった。


 教育改革を構造的に進めるための支援が目的であり、組織的にレベルアップを図ることが目的である。


特定の研究を通しての高度人材育成のための支援ではなく、また特定部署のみの改革支援ではない。


採択された案件の特徴は自己評価自己点検がよくなされており、各大学の特徴がよく表れていた。


 採択された多くの案件は、蛸壺的な縦型改革ではなく自己点検、自己評価の精査により横断的教育への連携がより図られていた。

事例報告A:北海道医療大学(人社系)


「科学者実践家モデルに基づく臨床心理学教育」


1)臨床的出来事を科学的に理解し、実践できるという「科学者実践家モデル」を教育の基本とする。科学者の目を持って臨床の場で起きていることがらを理解し、同時に実践家としてそれを社会に還元できる人材を育成しようという発想。


2)他職種との機能的チーム医療を行なうことを可能にするため「客観的臨床技能試験」(OSCE)の導入を図る。臨床心理学においても一定の技術を習得しているか否かは横断的に評価されるべきであり、他職種に教育内容の透明性を示すという発想。


3)地域的に携わり、その中で大学院教育をおこなう。地域にこそ臨床現場はあり、そこでの教育が重要という発想。


4)インターネットを活用した臨床心理学的援助システムの構築し、地域特性を考慮した臨床心理学的援助に携わる人材育成をする。北海道という面積が広く、しかし経済的基盤が弱いという地域に限られた人材で支援活動を行うためにはインターネットによる活動が必須という発想。


実現に当たっては、修士課程一年次では基礎心理学を中心として、臨床心理学的な各種援助技法を学ぶ。修士課程2年次では実習を中心として学内、大学病院リエゾン、ITを並行利用して行なう。また、地元自治体との提携による地域支援の実習などである。今回提出したプログラムは今までの学部・大学院教育の流れに沿っている。(採択理由、教育プログラム概要は配布書類参照のこと)

事例報告B:東京農工大学(理工農系)


「科学立国人材育成プログラム」


教育拠点としての7つの特徴


1)専攻融合型スーパー国際大学院


2)学費の全額免除、産学連携外部資金の教育への還流等、特別経済支援


3)「派遣型高度人材育成プログラム」の必修化


4)国際協力校への短期海外派遣の必修単位化


5)外部資金から個々の学生の能力に応じて4年分の資金の50%確保、農工大FDを通じてRA契約し、残り50%は本プログラムより供給。


6)英語と日本語の教育強化、修士論文の英文化と国際学会誌に投稿することを必修化。日本語教育による論理性や分析能力の強化。


7)キャリアパス支援
高い知識と技能を有しかつフレキシブルな思考とビジネスマインドをもつ博士を、産業界に即戦力として供給する。数年に渡る議論の結果、「基礎研究シーズと産業界シーズのマッチングを基盤とした産学連携」を生かした自由で競争力のある教育拠点の設置に至った。学長自ら選抜したアクティビティーの高い教員を推進者として集結させ、特別な経済支援(外部資金の環流)を利用して、「シーズ」を見出す高い研究能力とこれを「ニーズ」と結びつける広い視野をもつ「産業界の即戦力となる博士の育成」を目指す。(採択理由、教育プログラム概要は配布書類参照のこと)

事例報告C:神戸大学(医療系)


「拠点融合型プロフェッショナル臨床医教育」


学位所得のための研究医の育成だけでなく、臨床技能の修得を重視したリサーチマインドを持つ臨床医の養成を目的としたプログラム。臨床系の医学系大学院コースとして、神戸大学関連病院専門医認定拠点、兵庫県内の高度先進医療拠点、神戸大学の海外新興・再興感染病拠点等の地域特性を有機的に融合させたコースを持っており、以下の3つのコースで構成されている。


1)専門医取得コース(必修)


2)高度臨床技能修得コース(選択必修)


3)国際臨床技能修得コース(選択必修)


学内での指導に加え、拠点に於いて神戸大学客員教授や非常勤講師の指導を受ける複数指導体制を組んでいる。


また、共通教育(ジェネラルレクチャー、国際コミュニケーション、医学研究先端コース)を設け、関連領域に関する組織的な教育により、幅広い視野を身につけさせる。


期待される成果:


・ 共通科目の履修により学際的な分野への対応能力が養成される。
・ 学位と専門医の両認定資格が取得できる。
・ 自律的研究遂行能力が養成される。
・ 高度臨床技能を修得したリサーチマインドを持つ臨床医が養成される。
・ 魅力ある臨床医学系大学院教育が整備され、多くの人材が集積される。


社会的意義:


・ 地域の拠点運営の効率化が図れる。
・ 地域の拠点機関が拡充される。
・ 地域連携活動の一層の推進が図れる。
・ 地域の拠点機関との有機的な融合により、社会のニーズに対応した人材が養成される。
・ 交際的な場でのリーダーシップを発揮できる世界水準の人材が養成される。
・ 我が国の臨床治験や医療機器開発等の臨床研究が進展される。
(採択理由、教育プログラム概要は配布書類参照のこと)

参加選考委員による質疑応答


質問:このプログラムは有名な先生を全国で百人くらい選定して予算を渡して、面白いプログラム例を作り上げれば皆がそれに続くのではないか。


応答:このプログラムはその様な徒弟制度的な個人能力にたよる改革ではなく、大学院全体が組織的に取り組み、国際的にも先端的な研究者が多く輩出される仕組みを創出させることが目的である。また、採択された多くの大学は自己評価、自己点検がよくなされており.その上でのプログラム開発であり横断的教育への取り組みに説得力をもつものであった。

私見(感想)


どの大学も横断型の研究組織を目指しており各々の大学の特性を十分に生かしていた。本学も従来より、自己点検自己評価委員会による点検評価が進んでおり、美術大学特有の講評会や批評が育む人材教育について自然な流れであると感じた。各大学が今後の問題点について意識を共有しており具体化されるプログラムの内容は多少の相違点はあるものの、地域特性や国際化、総合的な能力開発などは本学も同じであると感じた。



(文責:多摩美術大学教授 高橋正)



2008年2月10、パシフィコ横浜で行われた「文部科学省 平成19年度大学教育改革プログラム合同フォーラム」。
多くの来場者でにぎわい、競争的補助金「大学院教育改革支援プログラム」説明会や、下記プログラムへ熱いまなざしが注がれた。
ここでは一部のモデル校とも言える採択校3校による「分科会」の内容を報告書にまとめる。
他に、全採択校がブースを構え説明会に臨んだ「ポスターセッション」などが行われた。本学はポスターセッションに参加している。