描くことにとどまらぬ、奥深く可能性にあふれた表現へ向かって
版画は、手で直接描く絵画と異なり、木や銅などの「版」を用いて平面(二次元)の表現を行う、さまざまな特質と多面性をもった芸術です。作品の土台となる紙などの質感はもちろん、選んだ版やインク、技法によって、その表現は多種多様に広がり、つくり手の創造を助け、より深い世界の表現を可能にすることができます。また、「描く」「彫る」など手の技術を身につけるとともに、版によっては化学的な知識も必要とされ、旺盛な好奇心や制作欲を充分に刺激する、奥深い表現方法といえるでしょう。1枚の版で、複数の作品ができるという「メディア」としての側面をもっていることも特徴です。
歴史をひもとけば、日本の浮世絵版画(木版)は西洋に多大な影響を与えました。印象派の画家たちは日本の版画をヒントに、その優れた表現力をより自由に羽ばたかせました。日本の版画の歴史は、近代ヨーロッパの絵画史のなかでもユニークで重要な位置を占めており、現在も海外の国際版画コンクールで多くの受賞者を出すなど、日本の美術のなかでもきわだった国際交流の力をもっています。
日本で1年次から版画専攻がある美術大学はわずかしかありません。本学の版画専攻は、幅広い知識と深い専門的な技術力、自由な発想のもとでの自己表現を目指し、4年をかけてじっくりと基礎から自在に版を操っての制作にいたるまで、充実した設備のもとで学び、実践することができます。基礎課程で、板目木版、木口木版、エッチング、メゾチント、ドライポイント、リトグラフ、木版リトグラフ、シルクスクリーン、さらにはデジタルプリントにいたるまで多様な表現を体験し学んだのちに、専門課程で学生は自分自身の方向を見定め、専門を選び、独自の表現に向かっていきます。新しい技法や大胆な手法を編み出す道も開かれています。版の魅力はその多様性と柔軟さ、尽きぬ可能性にあるのです。
教育課程
版画には多様な版種があります。絵画学科版画専攻では、各自が自分の表現に適した技法を追究し、必要に応じて伝統的技法や各種専門技法を学べるよう、カリキュラムが詳細に編成されています。1年次から、充実した教員と設備のもと、木版画、銅版画、リトグラフの基礎技法を学びながら、学年が進むごとに、主として自身の選択した版種を4年をかけて追究します。
- 木版画
- 従来の彫刻刀による彫りの表現だけにとらわれず、版材にさまざまな素材を活用して自由に加工し、そのなかから得られるかたちとテクスチャーによる版独特の世界を探求します。
- 銅版画
- 各種の技法を用いて版材に凹部をつくり、インクを詰め、強い圧力をかけて紙にその形象を刷りとる方法で、精緻で厳格、豊かで深い諧調を得ることができます。絵画・デッサン力の充実を図り、そのうえで銅版画技法の一切を修得します。
- 石版画(リトグラフ)
- 水と油が反発しあう原理を応用したものです。ほかの版種が物理的なかたちをしているのと違い、リトグラフは化学的な原理に基づいており、版の上に脂肪性のクレヨンなどで描画すれば、即時に版として成り立つという自由さをもっています。
授業科目 ※2011年度参考
1年次
版画実技(木版画・銅版画・リトグラフ・シルクスクリーンの基礎技法)/基礎実技(デッサン、学外講座)/特別講座(木口木版画、コラージュによるデッサン、オブジェ制作、身体表現デッサン)/版画材料学(紙の修復)/自由実技
2年次
版画実技(木版画・銅版画・リトグラフから選択)/基礎実技(デッサン、学外講座)/特別講座(色彩構成、コラージュ、オブジェ制作、身体表現デッサン、シルクスクリーン)/版画材料学/自由実技(紙の修復、シルクスクリーン、モーショングラフィックス)
3年次
版画実技(自主カリキュラムによる制作)/現代版画論/版画材料学/自由実技(フォトエッチング、ウォータレスリトグラフ、自作解説および作品批評)、ポートフォリオの制作
4年次
自由実技/卒業制作
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