タバコ虫の生態


小崎 亜衣


学名:ヒメコマユムシ
      (コマユムシ科、俗称タバコ虫)





生息地:南アメリカ大陸(主にブラジル,チリ)やインドのタバコ畑に最も多く生息している。

特徴:アリ科によく似ているが尻の部分は膨らんでおらず、細長い。その細長い部分が葉巻のようなので、ハマキムシと呼ぶ場合もある。色は丁度煎ったタバコの葉くらいの茶色である。インド型ヒメコマユムシはブラジル型と比べて色が薄い傾向がある。体長は最大で約3mm。

生態:*触角の先のTBプロペンという細胞がタバコの葉に含まれるサリトナクチンという物質に過剰反応するため、常にある種の中毒状態である。ゆえにタバコの葉からは決して離れようとはしない。
         *タバコの葉以外は食べない。
        *生産されたタバコや葉巻にくっついて(または煎った葉の中に死骸が紛れ込み)世界各地へ運ばれるが、気候や気温の変化に弱いためすぐに死んでしまう。

繁殖:*通常は枯れかけて丸まったタバコの葉に卵を産みつけるが、タバコや葉巻の表面を食い破り、そこに卵を産み付ける場合もある。産んだ後、尻から粘液のようなものを出し周りを強化する。
         *10月下旬〜12月上旬にかけてが産卵期で、孵化するのは4月中旬である。
         *一回の産卵につき、約10個〜20個の卵を産む。

発見:1502年にアメリカ大陸からコロンブスが持ち帰ったタバコの葉ついていたヒメコマユムシをイギリスの生物学者アレキサンドリア・ホープが発見。正式に新種の虫として学名がつけられたのは1505年である。

日本:気候の変化の激しい日本ではヒメコマユムシは長く生きる事が出来ないため、日本では未だにマイナーな虫である。しかし、開国前の14世紀頃オランダからわずかに入ってきていた煙管用のタバコの葉に紛れ込んでいた事もあったようだ。東海道五十三次の歌川広重が、モデルにしていた花魁の煙管から這い出してきたヒメコマユムシを見て、自身の絵に付け加えたというエピソードも残っている。

その他:ヒメコマユムシは体自体に常に大量のニコチンを含んでいるため、死骸や卵の入ったタバコを吸うのは大変危険である。しかし、見分けるのは極めて困難である。最近ではタバコの衛生管理もきちんとなされているため、めったにヒメコマユムシが紛れ込むことはないが、インドタバコなど製造元の不明瞭なものには割とよく入っているようだ。

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