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奥平藍

芸術と病理
Art and pathology

2012年東京工芸大学デザイン学科卒業
 多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻2年
  
2013年第2回東京装画賞 入選

E-mail:okkun.1008@gmail.com

私は「不思議の国のアリス症候群」という精神現象から着想を得てイラストレーションの制作を行っている。「不思議の国のアリス症候群」とは視界に異常のない状態で身体の一部もしくは全体の膨張感や縮小感や聴覚過敏を伴い、時間の速度の大きな変動が感じる症状である。この症状は現在の医学においても原因が解明されていないが、患者の年齢は10代前半から70代にまで及び特に若年層に報告例が多い。多くは偏頭痛持ちであることが多く、偏頭痛性阻血に伴う知覚異常であるという説がある。この代表的な症例に「極大と極小」の連鎖がある。名前の元となっているルイス・キャロル著の『不思議の国のアリス』では、この症例を驚く程正確に描写していると言う。ストーリーの中で、アリスは兎を追いかけて小さな穴に入り、そこで「ワタシヲオノミ」と書かれた瓶を見つけ、中身を飲み干す。すると瞬く間に自分の身体が大きくなり、そして次の瞬間には小さくなるアリス。アリスは「とても奇妙な感覚だわ」と言いながら自らの身体に起こった幻覚とも錯覚とも言えない感覚に困惑する。これこそが「不思議の国のアリス症候群」の感覚である。

私自身もこの体験に幼少の頃より様々な場面で悩まされることがあった。自分の親指が大きく膨れ上がったり、聴覚過敏になり車の音が迫ってきたり、天井に押しつぶされるような恐怖感に声を上げた時もあった。大人になるにつれその感覚は小さくなり、現在はふとした場面に多少違和感を感じる程度だ。しかし、この幼少の頃の感覚は今でもはっきりと覚えている。この感覚を視覚的に表現し、かつ感覚に訴えるようなイラストレーションが描けないだろうかと考えたことが、私のイラストレーションとしての出発点である。

私はこの「不思議の国のアリス症候群」をテーマに制作している過程で、作家の持つコンプレックスや病理性がいかに芸術やイラストレーションに昇華され、その内的世界の表面化に繋がっているかということを意識するようになった。本研究では「不思議の国のアリス症候群」をはじめ、病理の感覚を芸術として描いてきた作家の研究を通じて、感覚と内面世界、コンプレックスがどの様にして芸術として表現されてきたかということを考察する。

不思議の国のアリス症候群・象

不思議の国のアリス症候群・象

不思議の国のアリス症候群・犬

不思議の国のアリス症候群・犬

不思議の国のアリス症候群・蝿

不思議の国のアリス症候群・蝿