<書物設計ゼミ 宮浦杏一>
あれは、テレビで見たのだったか。とある動物写真家が、熊の話をしていた。
樹の幹に爪や牙で傷をつけるあの行為は、マーキング以外にも意味があるのらしい。
傷ついた樹は、痛んだ箇所を庇うように、覆うように成長する。傷の箇所を囲うように太るから、内側に空洞ができていく。なぜか。その空洞は、何十年後の何世代も後の熊が、そこに入って冬眠をするための空洞なのだという。何と時間のかかる贈り物だろう。
親戚に、「大学で何を学んでいる。」と聞かれて閉口することがある。踏みとどまること、考え続けることに対して、それは単純に映らないか。
郵便配達夫シュバルの妄想が創りあげてしまった理想宮や、宮沢賢治の小説が今になって僕たちに届いている。何かを急ぐ前に、芸術をみること、つくること、届けることに踏みとどまること。そういう時間をここで過ごせたと思う。

★第3回対談、宮浦杏一

N:おれのブログの対談が遂に第3回で、皆さんいかがお過ごしでしょうか。もう疲れ果てて毎日ブログ更新するのも馬鹿馬鹿しくなってきた(笑)今日この頃のNGバルバロイです。今日は共同企画者の宮浦杏一を招いて、ここ神保町の喫茶店さぼうる2で対談をしようという。どうもこんにちわ。宮浦君、自分で自分の自己紹介を。
 
杏:どうも、皆さんこんにちわ。宮浦杏一と言います。杏一の「きょう」は、「杏」という漢字を書きます。「あんず」という漢字を書きます。「あんずちゃん」と呼んでください。
 
N:ふーん。うちの妹、おんなじ漢字使って杏奈(※1)っていうけど。
杏一は「nuance」(※2)っていうバンドをやってるんだよね?こないだが初ライブの。
 
杏:そうそう。2/3に大塚のMEETSっていう新しいライブハウスでやって。
 それがバンドの初企画の初ライブで、2/20の獣どもの宴でラストライブって言うこのスピード。スピード解散。
 
N:ふーん。そう(※3)。で、今回はおれと、うちのバンドの上原拓舞と宮浦杏一で共同企画なわけだけど、遂に企画者が対談で口を開くというね。前回までの対談は、国会で例えると総理が野党からの激しい詰問・追及に遭って。しかも大臣は会見では居眠りという朦朧としたグロッキー中川スタイル(※4)で。なんとかのらりくらり答えていたわけだ。そして、今回の対談では、遂に与党側からの論客が答弁に望むとあってわたしとしては非常に嬉しい。対談の一回、二回目を読んで率直な感想はどう?
 
杏:対談を読んでの対談だ。でも与党は「獣ども」第3回からしか知らないよね。ナカジマのことも一昨年多摩美に入ってからだし、それ以前のことはあんまり知らない。
みんな獣どもの宴のことは第一回から知ってるわけでしょ。そこでミッキーなんかは「獣道」(※5)、ナカジマの「獣道」が薄れてきていると。やんや言うけれども。

 でも、そういうのはお前が去年からやっているNOISSES ZZAJUN、詩の朗読との即興、逆噴射中学とかをおれは実際に見ていて、それ以前の話は聞いてしかしらないけれど、むしろ割と上手く回せるようになってきてるんじゃないかな。今の状況の中で周りを見渡してね。
 じゃあ、逆に状況自体を回しつつも、結局は状況自体をもナカジマが作っている。多摩美でもそうだし、そのことについてどう思ってるの?例えば「獣どもの宴」をナカジマ以外の奴がやるとか、そういうことは望んでいないわけ?
 
N:状況クリエイターとしては(笑)。今までの「獣どもの宴」の主体的に関わっていたメンバーは今回は殆ど関わっていないんだ。ただ旧獣どもメンバーに対して問題提起的ではありたかった。やり方を変えてゆくことで、野党がどよめき立つと。麻生的には酒乱のスタッフを入れたり(笑)。「ええ、まあ…?」とか言って。一石投じて、皆が色んなことを思うっていうのがおれは大好きだから。獣は皆のそういう気持ちを食べて生きてるんだ(笑)。
 ところが今までのメンバーは現在あんまり音楽活動していない。だから一からリフレッシュしなければという意味もあった。おれ自身も今新しい状況の中にいて、企画のやり方は今までと違っていても出演者は少しずつ以前のリンクが残っているところから選んだ。以前から繋がっているリンクにはもう一度血を通わせておこうっていう確認の意味もある。
 まあでも色んな人に色んなことを思って欲しいのが一番だね。