a gigantic cage of glass  Shiro TakahashiLocus Solus → Chapter 4

第4章は、死者の生前の行為を再現して、遺族の悲しみを癒す、ガラス張りの死体劇場である。

遺族が持ち込む最愛の八体の遺体は、それぞれの人生のクライマックスに脳細胞シナプスの結合ネットの形で物質化された記憶データが、蘇生液と金属触媒の電気作用で活性化されて、死者の筋肉運動を再演する。屍体蘇生の原理

絵画や彫像などの表象で記録されてきた出来事のクライマックスは、映画の発明以降において、動く映像によって記憶されることとなる。
当時発明されたばかりの映画を、太陽光を利用して撮影するためのガラススタジオを、「ガラスの檻」として考えるならば、8つの死体が演ずる死体劇は、ルーセルが制作したかった映画の8つのプロットといえる。ルーセルの映画制作が実現していれば、マジック興行として誕生した映画1902年メリエスの「月世界旅行」が、1920年ヴィーネの「カリガリ博士」などの心理映画に発展していく映画創作史を埋める作品となったであろう。

Roussel's plots of Eight Cadavers
5-1. 詩人ジェラールの監禁
5-2. 金婚式のマオ夫婦
5-3. 俳優ロランの白紙委任状
5-4. 幼児セロスの暗唱
5-5. 彫刻5-6. 作家ルカルヴェの放射線治療
5-6. 作家ジェルジュクの創作法
5-7. 上院議員夫人の血
5-8. 謎の自殺者コルティエ青年


この死者の劇場ともいうべき「ガラスの檻」は、自然の採光を利用した初期のガラス張りの映画撮影スタジオを思わせる。
ダゲールと同様に肖像画家であったアントワーヌ・リュミエールの二人の息子によって興行されたシネマトグラフ『リュミエール』1894年の成功は映画産業を興し、心理的なドイツ映画に発達した。

死体ロボット達は、その出力機構が働くだけで、フィードバックに必要な入力センサーと論理回路が機能しないために、カントレルの助手達は死体ロボットと外部環境を同期させるために舞台裏で大活躍する。鉄腕アトムのような自律ロボット開発をめざしながら、フレーム問題を克服できなかった現代のロボット開発に似ている。
メアリー・シェリーの小説1918年『フランケンシュタイン:すなわち現代のプロメシュース』に登場する、名前さえも付けて貰えなかった被創造体の場合は、死体の部品を寄せ集めて構成された人体が、誕生後の自発的な学習によって人間らしい思想を獲得していき、創造主である医学生ヴィクター・フランケンシュタインを伴って自滅していく物語である。ルーセルの小説には、このような一神教徒に特有なフランケンシュタイン・コンプレックスはない。

Paris Morgue

[1825 Passage du Grand Cerf]
屍骸の腐敗を防止するための強力な冷房空調装置は、1906年にウィリス・キャリアによって発明され、ニューヨークで普及した。
[google/patents] 808897

1835 Wax Figure, MadameTussaud in London's Baker Street
1899 Psychoanalysis, "Die Traumdeutung" Sigmund Freud
Trauma(psychological trauma, traumatic experience )
1902 Cnema,"Le Voyage dans la Lune" George Méliès


[RussianMemory]