石彫や金属などによる堅牢な剛体造形物が、権威の象徴や永遠の記念碑として、造形芸術の主流をしめてきたのに比べて、毛皮・藁・布・竹・瓢箪・泥などの柔らかい物は、亡びやすく、価値の低い素材と考えられています。 しかしながら硬くて冷たい、価値のある文化よりも、柔らかくて温かな、はかない文化に、人間は身近に親しんで来ました。機械文明を代表する自動車でさえ、その内装は柔らかいクッションで被われています。

1)風船のメタファー

俵屋宗達「雷神風神図屏風」の風神は、丈夫そうなチューブの両端を確り握って、空気の流出を押さえています。

youtubr[Charlie Chaplin:Globe Scene]

ヒエロニムス・ボッシュ1516年作「快楽の園」には、透明球の中で睦む男女が描かれています。

ブリューゲル1568年作「人間嫌い」に描かれた、透明のガラス玉は、針金で十文字に補強されていて、その中に入った人物が、聖職者の財布を盗ろうとしています。

人間風船

「快楽の園」右扉内側部分の地獄の場面には、怪物の便座から垂れ下がる灰色の風船が描かれています。風船は排泄される内臓のようで、中に落下していく裸体の男女が描かれています。

中世の絵画に描かれている風船は、現代のゴム風船と異なり、浮遊しません。風船のメタファは、内部と外部を分ける界面の表象であるようです。


ピーター・ブリューゲルが描いた絵画「子供の遊び」1560年の右下に、豚の内臓を膨らませて遊ぶ子供が描かれています。ゲルマン民族は豚を解体し、殆どの部分を料理に利用しましたが、食べられない膀胱は子供の玩具となりました。

同じ画面の左下には、シャボン玉で遊ぶ子供も描かれています。