情報デザイン学科に「情報芸術(映像音響)」および「情報デザイン」の2専攻を設置する必要性について<案>

2002.03.01情報デザイン学科

▼趣旨とその経緯

1)情報デザイン学科は2001年4月1日に全4学年480名がそろう完成年度を迎えた。本年度はその一期生が就職活動を行なっており、480名を対象とする新たな教育組織の改革が急務である。

2)学科設立以来4年間にわたる試行錯誤を経て、学科の教育領域は、言語/平面/絵画/立体表現から映像/音響/ 環境表現まで、また技術からデザイン/芸術まで、設立当時の予想を越える広い範囲に発展した。

3)このような多人数の学生、かつ広範多様な教育領域を対象とせざるを得なくなったため、学年120名を1つのフレームの内で取り扱う従来のカリキュラムでは、どうしてもその内容が広く浅い平均的な内容にならざるを得ず、内容の深化が難しいと同時に、高度な専門教育を希望する学生の不満が多い。

4)だからといって従来型の、研究室単位で領域を過度に細分化させていく蛸壷的解決は、未だ発展途上の情報関連教育領域には不適切であるばかりでなく、時代的にも逆行する将来性に乏しい方策である。

5)そこで情報デザイン学科は、一旦これまでの学科カリキュラムを解体し、それを大きく2つのテーマを軸として再編することで、学年あたり約60人の学生を対象に、横断性と専門性を両立させ得ることが可能なサイズの「コース」に、学科全体を効果的に再構成し、2002年度から全学年のカリキュラムに対して執行する手筈を整えた。

6)2つのテーマ、すなわち「コース」とは、映像と音響を軸にデジタルテクノロジ時代における新たな自己表現のありかたを提案する、作家育成指向の「アートコース」と、インタフェース/インタラクション技術を軸に人間とテクノロジが実現するこれからの社会生活を築いていくための理論やスキルを習得する、社会(企業)人育成指向の「デザインコース」の2つである。これらは、単に教育領域のみならず、作家と就職という美術大学卒業後の進路の方向性(特性)にも配慮した構成となっている。

東京芸術大学に新たにできる「音楽環境創造科」、あるいは武蔵野美術大学「映像デザイン学科」国立音楽大学「音楽デザイン学科」などの領域と競合しながら、多摩美独特のカリキュラムを編成する。

7)2001年4月、この「アートコース」「デザインコース」の2入試実施の合意にも関わらず、募集段階で実施不可能となり、昨年8月の段階で断念せざるを得なかった。やむを得ず2002年2月の入試では「メディアアート/インタフェースデザイン/マルチメディアデザイン」という3つの履修希望を願書に記載することとなったが、その結果は647 名/92名/78名という極めてアンバランスな希望となり、判定時に混乱が生じた。

8)コース分けに先だつ先だつ2000年度、2001年度の3年次以降の専門課程履修へのクラス別け編成、および来年度以降の在校生に対するコース分けにおいても履修数のアンバランスは困難を極め、学生の不満欝積と学科全体のモチィベーション低下に繋がりかねない結果となった。これはひとえに、入学時、あるいはそれ以前に学生に対して明確なコース分けの存在が示されておらず、入学後に希望のアンバランスにより、自らが希望しない不本意なコースに振り分けられる可能性があったためである。

9)したがって情報デザイン学科は、2002年4月よりこうした不都合を解消するために、情報デザイン学科「アートコース」をベースにした「情報芸術専攻60名」、および「デザインコース」をベースにした「情報デザイン専攻60名」に教育組織を二分し、小数精鋭教育のための高度なカリキュラムを実施する。前項にも記したように、それぞれが独立した専攻として、入学時から個別に学生を採ることが特に重要である。

なお、両専攻は分離後も、共通の基礎教育科目/講議科目/共同プロジェクトを通して相互に共同、啓発し合い、研究領域選択の幅を狭めないよう留意する。

それぞれのコースで少人数のクラスを組織し、学習領域の関連性を高め、専門性の強化を計っています。同時に両コースは、共通の講義科目や共同プロジェクトをとおして連携し、情報の表現とデザインのエキスパートを生み出していきます。

入試内容も同様とする。

▼情報デザイン学科「情報芸術専攻」の概要

芸術・科学・技術の総合的理解と実践的知の習得をもとに、メディア、映像、サウンド、エレクトロニクス、ロボティクス、バーチャルリアリティなど、さまざまなテクノロジーを背景とした新しい表現の領域を探究します。

メディア・アート、ネット・アート、サウンド・アート、インスタレーション、パフォーマンス、映像コンテンツなどの多様な形態の作品制作や、関連する調査研究に取り組みます。

従来、美術大学と音楽大学、あるいは東京芸術大学における美術学部と音楽学部のように、視覚/空間表現と聴覚/時間表現にかかわる教育システムは、あたかも東洋と西洋や右脳と左脳のように分離させられ、それぞれが異なる歴史や制度に依りつつ、個別のカリキュラムや文化を形成、流通させてきた。

しかしながら、コンピュータやインターネットなどに代表されるデジタル情報テクノロジーの発展により、映像と音響/音楽表現を対等かつ総合的に取り扱うための技術基盤が普及し、同時に映像の音楽性や音響/音楽の映像性といったヘテロジニアスなテーマの探究の可能性や、映像と音響/音楽を並行かつ総合的に学ぶための新たな考え方や教育システムの必要性が、急速に高まりつつある。

情報芸術専攻では、こうした技術/社会環境の変化と表現の新たなる可能性の拡がりを背景に、映像と音響表現の2つを軸としつつも、それらを総合的に結びつけるため、さらに広く立体や空間、建築や環境などの要素も含んだメディア/インフォメーション・アートの制作教育研究をテーマとする。そこでは、芸術のみならず、哲学や科学の総合的な理解と実践的な知の習得をもとに、テクノロジーを背景とした新しい表現の領域が探究される。

▼情報デザイン学科「情報デザイン専攻」の概要

インタフェースデザイン/マルチメディアテクノロジ

形のない「情報」と人間/社会の新たな関係をつくりだすこと、それが情報デザインです。国際情報通信ネットワークが普及する今日、情報デザインは私たちの社会生活のさまざまなシーンで求められています。情報デザイン学科では、美術系、理工系、人文系というこれまでの学問の枠組みを超えた、新しいタイプのクリエーターの養成を目指します。

情報とコミュニケーション活動に着目します。対話すること、学ぶこと、共同すことなど、人間と情報通信技術が実現する生活世界を、豊かに構築するためのデザインの理論と実践を学びます。

芸術、人間、社会、技術に関する幅広い知識、美しい「もの」と「こと」を表現するスキルを習得し、デザイナーとしての感性と資質をみがきます。そこから、WEB、テレビ放送、携帯電話サービスなどのインタラクティブなグラフィックス、携帯電話から自動車までさまざまな知的情報機能をもつプロダクツ、そして、情報ネットワーク化される環境空間など、新たな領域のデザインに取り組んでいます。

▼承認協議の確認

2002年2月10日 理事長/学長/教務部長/事務部長と学科長との協議により、来年度の募集は2専攻で実施することに合意し、2専攻を文科省に申請することとなったので、次のとおり作業を進める。

・作業スケジュール
2002年3月:新専攻の主旨および科目説明の執筆配布→教務、広報、総務、経理
2002年4月:新専攻のパンフレット発行 在校生ガイダンス
2002年4月:教授会で学則変更を承認、文科省に申請
2002年5月:「大学案内」の発行
2002年6月:新入生募集開始 広告
2002年7月:オープンキャンパス 大学説明会
2003年2月:2専攻による入試実施