006 親柱の主張

東京都

 橋の欄干の四隅に立つ親柱のデザインに、強烈な主張をしているものが増えてきている。

 牛込橋の場合、一見歴史性を表現しているように見えるが、かつてこのようなデザインの親柱が存在したことは無く、上部を見ると明らかに建築の縮小版だが江戸城の姿を模しているにしてはお粗末なかたちだ。しかしこのデザインを云々する前に土木が置かれている状況を考える必要がある。建築工事に比べて土木工事は「景観を破壊している」という批判にさらされる機会が多い。橋は橋そのもののデザインで勝負すればよいのに、「景観を破壊している」と言われることへの恐れから、何とか景観デザインに参加しなくてはならないという強迫観念にさらされる。その結果、この種の暴走を数多く生み出してしまう。その主張が一番出やすいのが親柱で、景観のことを気にすればするほど、景観にダメージを与えている。これを防ぐようなデザインの手法を考える前に、橋が橋本来のデザインで主張できるように、景観における土木デザインの地位を向上させなくてはならない。いや、一歩引いて見れば、この種の素人デザインが大きな土木構造物に付いてしまうことを許容するのも現代の日本的な文化の特色とも言える。そう考えればほほえましい景観にも見えてくる。