007 なまこ壁

 

                          山梨県身延                                 山梨県塩山駅  

 平瓦を壁に貼り、漆喰で目地をもりあげる「なまこ壁」は全国各地の民家に見られるが、この造形は古さを演出する上でとても安易によく使われている。そもそも防火上の機能を持つ「なまこ壁」は現代の建築法規から見ると茅葺き屋根などよりはるかに保存しやすい。また新築の建物で古さを演出するにも、単純な造形なのでだれでも図が書ける。左は「ニセモノなまこ壁」の前に立つ「ペイントなまこ壁」、隙間を考慮して目地ピッチを合わせているところが泣かせる。右は橋上駅の鉄骨の下に駅の構造とは切り離して建つトイレの「タイル製なまこ壁」、古っぽさのお手軽表現では使い勝手ナンバーワンの「アーチ」がセットになっている。 下は無人精米所。お米となまこ壁が結びつく理由は何だろうか。

 古い町並みで、その古さを意識して新築しなくてはならないケースは多いが、このとき板壁では法規上難しく、白い漆喰または漆喰風塗装ではちょっと物足りないというとき、このなまこ壁風の柄はとても扱いやすい。こうして「なまこ壁」が無かった土地にも、また「なまこ壁」があるはずない材料の上にも単なる「柄」として広く普及している。景観上はとても悲しい姿だが、これも21世紀初頭の日本の環境デザインの現実であり、歴史の1ページである。

 栃木県下野市