011 超高層の縁側

東京都中央区

 日本 の集合住宅はそのほとんどが隣戸と連続するバルコニーを持っている。そして超高層になってもこのスタイルを貫くことが多い。最近そうではない事例も出てきたがまだ連続バルコニーの存在は圧倒的である。世界的に見れば住戸の幅いっぱいにバルコニーが付くことのほうが珍しい。つまりこのバルコニーは日本特有の建築様式である。内部階段と外部への2方向避難という法規に合致した作りだが、これは連続バルコニーをのほう先であって、そういう習慣があるのならということであとから法規がこれを利用したと言える。この空間は伝統的な住宅の縁側から継承されている。超高層マンションの外壁は積層した濡れ縁とも言える。このスタイルを否定しているわけではない。外部でも内部でもないような緩衝空間である縁側は日本の気候や生活習慣から生まれたすばらしい空間である。おそらく大多数の日本人は居間の開口は床まで開く掃き出し窓になっているのがあたりまえと思っているだろう。その外にあるのはバルコニーと呼ばれる濡れ縁である。この外部とのつながり方は無意識のうちに継承される日本建築であり、その使い方や効果など、必要性を分析する意味が無いほど、「血」のように受け継がれていく「好み」と言える。