012 貸家のまわり

茨城県

 日本 はかつて持家より貸家があたりまえだった。アパートなどの集合住宅ではない戸建の貸家が数多く存在した。最近減ってしまったが、まだ同じ形の家が並ぶ貸家を見ることができる。 その外部はあきらかに持家と異なる景観を作っている。貸家は土地を分割して貸すのではないため家のまわりは共有スペースとなる。そこには戸境を示す塀はなく、並んだ家と家の間はひと続きの空間になっている。生活感があふれるものが並び、生活にとって必要な工夫が見られことがあるが、所有地ではないためその範囲は家からあまり離れたところまで及ぶことはなく、力いっぱい手を入れて整備されることはない。この「境界線のないゆるい外部」が独特な景観を作っている。ブロックやフェンスで囲われてしっかり造園された戸建の庭と比較してどうであるかを論じるわけではないが、この貸家のまわりの雰囲気は確実に減ってきている。しかしそのことが意識されることは少なく、気がついたらどこにも無くなってしまう景観と言える。