005 土に還る家  ブータン  /パロ

 

 

 ブータンの民家は 土と木でできている。1階は仮枠を使って土を突き固めた 版築 という構造で、2階は木造の柱と梁による軸組構造、屋根は板葺き石置き屋根。雨が降る地域なので屋根板の寿命は長くはない。しかし住民の手によって簡単に葺き替えが可能である。人が住んでいる限り、屋根はメインテナンスされるので、家は長生きする。築100年を越す家も残っている。しかし人が住まなくなるとまず屋根が腐る。屋根板が無くなると2階が雨ざらしになり、太い柱もやがて腐る。2階がすべて無くなると、1階の土壁が雨ざらしになる。もともと土を固めたものなのでやがて崩れ落ちる。すべてこの土地で取れた材料でできている家は、放置されても、この地の土に還る。その土で再び壁が造られる。

 写真の真ん中にあるのが、土の山になりつつある廃墟。ブータンは伝統的な民家ばかりだが、中にはかなり新しい家もある。それだけ捨てられた家もよく見かけるのだが、産業廃棄物にはならない。

 究極のリサイクルハウスである。チベット仏教の信仰が厚いこの地では輪廻転生と言ったほうが似合うかもしれない。何かを学ぶことはできても、そこに到達することはできない世界である。