006 ビスケットの摩天楼  チョウカンディ    /パキスタン

 

 

  まるでビスケットでできたビルのように見えるこの光景、実は墓地である。パキスタン、カラチの東27km、シンド地方の平原にある。16世紀から18世紀にかけて作られたイスラム教徒の墓で、2km四方くらいの土地に散在している。まわりに何も無い土地なので、遠くからも見えるが、ちょっとスケールがわからなくなる造形だ。彫刻された砂岩のブロックを積み重ね、高さは2m前後になる。日本の墓のような墓石ではなく、これが棺になっているらしい。段数に意味があるのかどうかわからないが、8段積みが一番多かった。一族の墓らしくまとまっていたり、子供のものらしい小さな墓が寄り添っていたりする。このタイプの墓はインダス川下流からイラン国境までの海岸地方に多いらしい。イスラムなので、装飾は幾何学的な文様ばかりだが、植物の造形をベースに、女性の墓はネックレスや宝石を、男性の墓は武具や馬具をモチーフにしたものもある。男性の墓の上には円筒形の石が帽子のように乗っている。

 カラチへの帰り道、ハイウエーに戻ると、来るときにバスを降ろされた場所はバス停ではなかったらしく、バスは何台も通るのに止まってくれない。しばらくして止まってくれたトラックに乗せてもらうことになった。こんなときの会話は「カラチ?」「カラチ、カラチ」だけで十分だ。しかしカラチまで行くのかと思ったら、乗せてくれたのは、もよりのバス停までだった。