008 作りかけの家  カイロの集合住宅    /エジプト

 

 

エジプトの首都カイロの郊外に増え続ける集合住宅はある共通した景観をもたらしている。ほとんどの家が途中で建築をやめてしまったかのうように、作りかけの姿をさらしているのである。RCのラーメン構造で、柱、梁は露出し、その間にレンガを積むという工法で、素材の対比としては美しいのだが、最上階の柱は鉄筋を出したままで終わっている。これは課税が竣工と同時に始まるのであって、居住開始と同時ではないというところを利用して、 住んでいるがまだ完成はしていないという状態を作っているのである。ごく最近の現象である。古来多くの土地で建築に税金がかけられてきた。そして人々は税金が少なくなるような形を生み出してきた。 床面積や間口、材料など、それら課税対象を操作することがその土地の建築のスタイルを決め、町並み景観を決めてきた土地も多い。自然発生的な土着の建築の魅力は同じ材料で共通のルールで作られていながら全く同じものはないというものであるとすれば、まさに現代のヴァナキュラーである。こうしたデザインが現代でもこれだけそろって実現できるとはおもしろい。最近景観を守るために建築の規制をすることが増えているが、規制から逃れることが景観を決めることになっている例である。カイロの作りかけの家はまともな防水はしてなさそうなので雨量が少ない土地ならではの手法でもある。