009 スケスケ小屋    /和歌山

 

 

大阪、天王寺から阪和線で和歌山へ向かい和泉山脈を越えるとどことなく風景が明るくなる。そんな中、和歌山市に近づくと畑の中にこの小屋が現れる。 それも農業用の小屋としてはかなりの密度で建っている。木を横にした桟と柱で構成されていて壁は無い。風通しがよさそうな納屋である。2006年に初めて見て以来気になっていて、これをスケスケ小屋と勝手に命名していた。2度目は和歌山線で東から向ったが、やはり和歌山市が近づくと3駅手前くらいから急に現れる。しかし和歌山市から南下すると見られなくなる。これは和歌山市周辺の狭い地域にだけ見られる建築である。和歌山の民家の変化を長年調査されてきた地元の研究者に聞いてみた結果、これは玉ねぎ小屋であることが判明したのだが、いったい何がおもしろいのかという顔をされてしまった。そのくらいこの土地では当たり前の小屋なのである。粗末な家のことを「玉ねぎ小屋みたい」という言い方があるそうだ。土着の建築、土着の景観はその土地の人にとってはあまりに当たり前のものであり、その特殊性にはなかなか気がつかないものである。それが地中の住居や 、断崖の集落などというほど大きな違いでなくても、隣の県、隣の町へいけば環境は微妙に異なってくる。こういう発見をすることはとても楽しい。