012 木彫の窓    トムスク/ ロシア

トムスクはシベリア西部、トムスク州の州都、シベリア最古の町のひとつである。かつてこの付近はタタール人の遊牧地であった。1604年そこに建設された要塞が起源で、17世紀には軍事拠点として栄えた。18世紀以降中央アジアや中国との外交、貿易の拠点となり発展した。1773年に最初の都市計画が行われ、石造建築と木造建築の区画が分けられた。1820年代に金鉱が発見され経済的に発展し、シベリア最大の都市になったものの、19世紀末に建設されたシベリア鉄道はこの町を通らなかった。理由は周辺に湿地が多いということで、このためトムスクは発展から取り残されていった。

19世紀後半から20世紀初頭の経済的に最も栄えた時期に大量の木造建築が作られた。トムスクはシベリアの木造建築の宝庫と言える。ロシアの木造建築は針葉樹の校倉が多く、窓まわりと軒先や破風に木彫装飾が並ぶ。窓の上下には校倉の木材が自重で下がってきて窓を押しつぶさないようにセトリングスペースという隙間を設ける。この隙間を隠すために一般に校倉造は窓周りの額縁が大きくなるが、ここを装飾で飾るようになってきた。トムスクの装飾はひときわ美しく、高度な職人の技術によって支えられて洗練されていった。トムスクはソヴィエト時代から国家的な政策として旧市街が歴史的地区として保存されてきた。興味深いのはこれら木彫装飾で覆われた家の雨樋の板金が、まるで大工と競うように細かい装飾で覆われていることである。

 

2重サッシ 上部に換気用の小窓がつく

1階は石造だが永久凍土が少しずつ溶けて家が沈下している

柔らかそうなふさ飾りも木製

樋の板金が競っている

壁は校倉の上に板を張る

風雨にさらされている場所なのに、彫刻はとても細かい

いくつもの通りに大量の木造建築が並ぶ

校倉の上から板を張っている

1階がレンガ造になっている

破風の飾りが美しい邸宅、現在はロシア・ドイツ友好会館