環境探訪記 

 人間はこんなところにも住めるのか、

 こんなことにこだわらなくてはならないのか                                          

●建築家なしの建築 との出会い

 高校生の頃に出会った、バーナード・ルドフスキーの「建築家なしの建築」という本 は私にとって衝撃的だった。これはホントに実在しているのだろうかというような不思議な環境の写真がたくさん載っていた。小学生の頃から旅行好きだった私は、それ以降、旅行の目的地が大きく広がってし まうことになる。 またそれが建築の道へ進むきっかけにもなった。

●不思議な生活、あたりまえの生活

 人間が生活をするための環境には、気候や地形などあらかじめ用意された自然環境と、宗教や習慣、産業など人間の歴史が作り上げた環境とがある。そのバリエーションがさまざまな住環境を生み出してい る。さらに隣接する文化からの影響、あこがれ、侵略、征服などさまざまな交流を通して住環境は変化していく。それらは時として不思議で奇怪な景観を見せることがある。しかしそれを不思議と思うのはよそ者であり、そこに住む人々にとっては日常的なもっとも安らぐ景観だったりする。このギャップ を体験するのが楽しくてたまらない。

●自由な生活、不自由な生活

 人間はこんなところにも住めるのかという自由さと、こんなことにこだわり続けなくてはならないのかという不自由さが同時に存在している。郷に入っては郷に従う というときの「郷」は実にさまざまである。そしてその中にいるときには気づかないような常識にしばられて生活している。しかしこれを取り払うのが目標ではない。時には守らなければならない不自由さもある。大事なのはそれを知ることで、自分が属する環境をあらためて旅行者の目で見ることができれば、その意味や価値を再発見することができる。

●旅行の楽しみ

多様な生活環境に出会うおもしろさをひとつでも多く経験するために各地に残る土着の環境を探訪し続けてい る。 すでに世界一周旅行を3回してしまった。ひとつの場所をじっくり見る旅行も楽しいが、短期間にたくさんの土地を見て同じ時代の断面を切るような旅行もまた楽しい。

 このコーナーは今まで訪ねた珍しい環境、しかしその地では無理のないあたりまえの環境、そんな記録を紹介していく。