畑のストック   

 

 山中に突然現れる立ち並ぶカラフルなストック。上は畑の作物のための支柱。下は道路と畑の境界柵。 どちらもスキー場が近い土地での光景だが、個人が持っているスキーをスキー場で捨てていく人はいない。これはおそらく貸スキーの廃棄品と思われる。畑の持ち主が冬は貸スキー屋をやっているのか、あるいは貸スキー屋の廃棄品をそのままもらったのかもしれない。この光景がおもしろいのは色がカラフルという理由ではない。ストックがただの棒と違うのはグリップ部分が人間の手の雌型になっていることだ。これだけで人間との接点が感じられて生々しく見えてくる。ここを握っていた人間の姿が容易に想像できる。しかも大量のストックがあれば大勢の人の姿が想像できて、ちょっと不気味な光景ですらある。

 日本では最近これはポールと呼ばれている。ストックは今どき使わない言葉だったかと調べたら、ストックはドイツ語、ポールは英語であった。ポールには棒の意味があり、ストックは杖を意味する。畑の支柱をポールと呼ぶのは違和感がないので、ここに紹介する状況ではあえてストックと呼んでおきたい。

 しかし見た目からくる意味を無視して考えると、アルミ製の錆びない棒で、しかも地面にさしやすい形状、農業用資材としてはかなり高級品である。再利用のヒントはどこにでも転がっている。

                                                                                        福井県南条郡南越前町板取 

                                                                                                 福島県岩瀬郡天栄村