トップ工芸を取り巻く状況と、多摩美陶プログラムでのカリキュラムの構成(目次)> 1. 陶プログラムの現在[1-5]
<< 前ページ
1. 陶プログラムの現在
 1-5. たくさんつくろう
■ 尹

 そして、4年生は、1年間に2つの自由制作の課題を、前期と後期にそれぞれ12週間ずつかけてこなします。ここの課題のタイトルは、先程言いましたとおりホームページで見る事ができます。

 まとめです。広い意味でのクリエイターとして、足腰、基礎体力になるようなことを4年間で身につけてもらいたいという願いがあります。指導をしていて難しいことは、良いと悪いの理由が分かりやすいかたちで説明しづらいことです。講評会などで学生の作品を評価する際に、学生全員に共通する明確な基準をあげて、だからこれが良いとか悪い判断しているわけではないからです。

 それは、中村先生がいつも学生に対しておっしゃっている、「あなたの持ち味はこうだから」という観点を大切にしているからです。その観点では、AさんとBさんを、同じ基準では比べられません。そういう方法論はこの30年の中村先生の指導の実績が成果となって、知らない間に、井上先生や私の中にも、移入している気がしています。

 4年間のカリキュラムを説明するにあたって、やきものという視座と、クリエイターという視座から、お話してきました。当たり前のようでいて、他校でも案外見過ごしがちな視座の明確化と思っています。往々にして、やきものを軸にしたものづくりは、時代から取り残されているように学生自身が思いがちです。
 でもクリエイターという立場から見てみると4年間そうやってエンジョイした学生が持っている力というのは、かなり独特なものがあって、非常に高い潜在能力になっている。それはふさわしい場所にあてはまれば、社会の側がすごく欲しがる能力だというのが、みんなの4年間を傍で見ていて思う感想です。

 だから、学生諸君にいつもいうのは、自分は食器にしか興味がないからって、ものごとに引き気味にならないで、自分にはこれができるんだというように、つくり手として自信をもっと前に出していいと思います。そのためにも、手を動かして、何でもたくさんつくろうねというのが、閉めの言葉になります。

【多摩美の陶作品・14】

 トップ工芸を取り巻く状況と、多摩美陶プログラムでのカリキュラムの構成(目次)> 1. 陶プログラムの現在[1-5]