交換留学体験談

交換留学体験談(2)

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入江 敬仁
造形表現学部デザイン学科
留学先: 弘益大学校
期 間: 2007年8月~2008年2月

授業について

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アート・デザインにおいて弘益大学は、ソウル大学とともに、韓国でもっとも有名な美術学部と称されています。多摩美と大きく違う事は、授業のペース、課題数が多いこと。短期間でテンポよく課題をこなしていかなければいけないため、忙しくなると思います。そのため、ほとんどの学生はアルバイトをせず、学校だけの生活に打ち込んでいるようです。また、専攻の学科だけの授業に縛られず、2学科専攻が可能なため、デザイン科の生徒も、ファインアートの授業を選択したり、視覚デザイン科にも関わらず、プロダクトや、テキスタイルまでも学ぶ事が可能です。1つの授業においても、いろんな専攻の学生とも話せますし、幅広く知識や経験を得る事が出来ます。また、学年を超えて授業選択も出来ます。ただ、3年次であれば、1年次、2年次といった下の学年の授業に限られますが。タイポグラフィーについては、韓国語、ハングルの字体の研究、構成、エディトリアル中心になるので、1・2年次の授業にて、基礎から学ぶ事が出来ます。

僕の場合、視覚デザインを中心に、ドローイングやイラストレーションの授業も選択し、様々な学生と出会う事が出来ました。授業はすべて韓国語になりますが、多くの学生が、英語に加え、日本語も学んでいるため、本当に快く授業内容を韓国語から英語、もしくは日本語へと訳してもらえて助かりました。とくに日本語を勉強している学生は、普段、日本語を使える機会がないため積極的に話しかけてきてくれます。また、月曜から金曜までの授業時間内に、韓国語の授業選択もすることになると思うので、専門科目に加えて、韓国語も勉強出来ます。

学校の出力サービスや設備に関しては、あまり充実しているとは思いませんが、学校の近くに多くのプリントサービスが集まっているし、慣れれば問題なく制作に活用できます。

交換留学生として在籍しているため、インターナショナル・サークルの活動もありますが、強制と言ったカタチではなく、自由参加であるため友達同士の関係を築けると思います。渡韓当初より、様々な場面で助けてもらえるし、いろんな国からの留学生と共に活動する事が出来ます。サークルに参加している人たちも、すべてではないですが、留学経験があり、また英語の勉強に対する意識も高く、韓国に来て、英語と、韓国語を日常の中で学ぶ事が出来ました。

多摩美にいたときには、学べなかった事が、韓国で学べたように感じます。デザインのスキルは正直、多摩美で学んでいる方が身に付くかもしれませんが、(授業がすべて韓国語であるため、どうしても英語や日本語に訳しても、内容を正確に理解出来なかったり、表面しか見えなくなってしまうため・・・)デザインや、日本の文化、様々な国のデザイン・文化を色々な視点で見つめ直せるし、考えさせられました。

専門分野について

韓国語のタイポグラフィーを、1学期間で身に付ける事は、難しいと感じました。しかし、表面的なハングルの字体、特徴、背景は勉強出来たと思います。また、文化的な背景も、日本と密接に関わりがあるため、デザインと文化の関わりについても、多くの視点から学ぶ事が出来ました。タイポグラフィーが多くの文化に基づくため、韓国の文化を様々な側面から見る事が出来ました。また、パッケージデザイン等、日本のデザインが数多く参考に引き出されるため、日本の文化やデザインを新たな視点、日本の中からでは決して見れない視点で見る事も出来ました。韓国の文化に加え、日本文化、日本の世界の中での立ち位置を改めて認識出来たように思います。

語学について

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渡韓当初、英語もまともに話せませんでしたが、学校が始まるまでに3週間の時間があったため、始めは英語の勉強を重点的に行いました。クラスメイト、国際交流サークルの多くの学生が、英語を話せるため、英語にてコミュニケーションを取れ、英語も上達したように思います。サークルで、英語の勉強会も週一回の土曜日に行っていたので、そこにも参加。韓国語の勉強も、徐々に始めるも、まだまだ会話をスムーズに行うには、まだまだ力不足…。英語に関しても、プレゼンテーション等、多くの感情表現を必要とするのは、難しい。しかし、日常の会話は、だいぶ楽に行えるようになりました。

また、多くの留学生とも交流があるので、様々な国の文化や、言葉、価値観に触れる事が出来ました。また、そこから、ドイツや、中国での展示会の話など、今後の、活動の幅がこの留学をきっかけに広がりました。また、様々な国へ留学をした学生と話が出来、様々な体験談を話し合ったり、情報交換が出来ました。

異文化交流について

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同じ時期に、イスラエルから交換留学生が2人、ドイツから留学生1人、アメリカから1人。もっと、留学生はいると思いますが、これらの国から来た学生とよく話しました。金銭感覚から、デザインなどの視点の違いなど、はっきりと伺う事が出来ました。また、多くの学生が日本に対して興味を抱いており、東京は最高な街だと口を揃えて言います。うれしい反面、ちょっと複雑です。なぜなら、東京に住んでいたときは、渋谷の人ごみ、東京メトロのあまりに複雑な乗り換え、あまりにストレスフルな街としか見えてこなかったからです。また、海外から来た多くの学生は、韓国ソウルは、物価が非常に高いと言いますが、東京から来た僕にとっては、そこまで物価の差を感じないし、むしろ安いと思う事もしばしばありました。本当に日本と韓国は近いと思いました。文化交流や、様々な流行などの意識が似ている気がします。まだまだ、違うところも多いですが、韓国人の友人と話しているときは、本当に国の違いというポイントをあまり感じません。僕よりも、日本の映画からドラマ、音楽までを知っています。また、寮には、韓国人の学生だけでなく、他の留学生もいるため、様々な情報交換が出来ます。中国からの留学生に、6月に弘益大学と中国の大学の学生による、共同展示会への参加を誘われたり、3月にドイツ/ワイマールでの展示会と、交換留学での弘益大学での勉強に加え、それ以上のものを得たり、経験をする事が出来ました。 隣の国、韓国で学ぶという事が、こんなにも多くの文化に触れたり、価値観が変わるとは思っていませんでした。デザインを学ぶということ以上の事を学びました。また、韓国のデザインを学び、タイポグラフィーを学び、それに加え、日本文化も勉強出来たと思います。日本の良い面、悪い面まで、見えてくるようです! また、授業が始まった最初の一週間は、本当に大変でしたが、多くの学生が助けてくれたため、問題を抱えつつもうまくやって行く事が出来ました。また弘益大学の国際交流サークルの支援も本当に助かりました。同じ学生であるから、同じ目線でお互いの文化について語ることもできました。留学経験というのは、本当にその人自身のチカラになると思います。また、今日、英語が世界規準の言葉になりつつありますが、英語圏でない国で勉強するという事がこんなにもおもしろいとは想像していませんでした。おもしろいというよりは、大変ではあるが、言葉の重要性から、言葉のおもしろさを感じます。韓国語をまず、英語に訳し、それから、日本語へ。毎日が、言葉遊びのようで、これらの言葉から文化も垣間見れました。1日の濃さが本当に違います。

韓国生活について

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韓国に着いて、少しの間はお店等で食事を頼むにも、韓国語が必要となるので少し苦労しましたが、それもすぐ慣れると思います。安くて、量が多い…。少し辛いけど、それもすぐに慣れます。料理は、本当においしいし、日本食レストランも何軒か存在します。あとは、日本のラーメンが人気です。日本人観光客が多いため、日本語表記のあるお店も多々見かけたり、“居酒屋”と記された店も、ここホンデにも数多く軒を連ねています。

寮生活において、キッチンがないのが少し残念ですが、外での食事が安いため、問題なく過ごす事が出来ます。家賃は半年間でおよそ700,000ウォン。日本円で80,000円から85,000円と、生活周りは本当に安くなっています。

ホンデの街自体、今も多くの建物が建設中なため、今後もっと発展していくと思います。

生活において、うまくまとめる事が出来なかったのですが、特に不満や際立って良いという事もなく、ごく普通に、日本と同じように過ごせていると感じます。外見が似ているという事もあるし、韓国と日本がお互いの文化に興味を持っているからこそ、普通に話題も町並みといった環境も似てきているのではないでしょうか。

改善点・要望

韓国に来て終始、国際交流サークルのみんなに助けてもらったため、多摩美にもこのようなサークルがあれば良いのになと思いました。そしたら、学生同士の間から、多摩美の学生の英語力や、国際感覚も自然と浸透するのではないのかなと思います。日常的に、いろいろな国の留学生と話も出来、日本に居ても、もっと英語や韓国語を使う機会が持てたらなと思います。