交換留学体験談

交換留学体験談(4)

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長谷川 幾与
大学院美術研究科博士前期(修士)課程 絵画専攻(日本画領域)
留学先: アアルト大学
期 間: 2009年8月~2010年2月

授業について

学生全体が授業に対して積極的な印象を受けました。教授が話すのみの授業は少なく、教授と共に学生も批評に加わり対等に意見を述べます。プレゼンテーションや批評会で両者の意見を聞けることが良かったです。自分も話し合いに参加するには一定以上の英語力が必要でした。

履修登録方法は学部、科目によって違います。私の所属するThe school of visual culture はほぼWeb での履修登録でした。自分の学科以外の授業を履修したい場合は、他学科のamanuensis (多摩美でいうと研究室の助手のような役割の人です)に直接相談をし、履修の許可を取る必要があります。一部例外もありますが、科を隔てての履修が可能な ため、幅広い分野で学ぶことができます。学部の授業はフィンランド語、大学院の授業は英語(フィンランド語の場合もあり)で行われるので、交換留学生は英 語で行われる大学院の授業を取る人が多いようでした。1日単位のワークショップもあれば、2時間で終わる講義の授業もあります。スケジュールに合わせて取 捨選択が必要です。履修登録期間は長めなので、一回目の授業後に履修登録を取り消すことも可能です。

残念ながら絵画系の授業内容が充実していません。デザインに重点を置いている大学です。デッサン力も確実に日本の学生の方が高いで す。Fine Arts の交換留学生にとって、共有スペース以外のアトリエはないので、私は制作のためにスタジオを借りました(月額50ユーロ)。共有アトリエは授業時間外に使 用することができます。帰宅の際には、絵と道具を片付けて棚に戻します。

グループワークや美学の授業を通して、西洋の絵画理論を英語で学べたのは有益でした。

個展においては、日本画に対しての外国人の反応を知ることができて貴重でした。日本画の画材を日本から全て運ぶのは大変でしたが、現代美術における日本画の可能性を考察するのに必要な経験は得られたと思います。

デザイン学部(特に家具デザイン、テキスタイルデザイン)は設備が非常に充実しているようです。学生が木工室で高度な機械を駆使し て本格的な椅子を制作していました。グラフィックデザイン科の学生は課題が多く、常に忙しそうでした。工業デザイン科、空間デザイン科の授業は、制作より もデザイン戦略などのディスカッションの授業が多いようです。ヘルシンキスクールが有名な写真科は魅力的ですが、留学生には閉鎖的で、大学院の授業もフィ ンランド語で行われます。同じアートでもEnvironment Art 科は人気で、グループワークによるランドアートやインスタレーションを中心に制作が行われていました。

ヘルシンキのミュージアムは少なく、観られるアートが限られているので、美術史の理解を深めるべく年末年始と2月中旬から3月にか けてヨーロッパの主要美術館・博物館を見学しました。短時間、低価額でヨーロッパを回る最適の期間でした。ヨーロッパ内で学ぶ美大生は、入館料が無料にな ることもあります。

語学について

ほぼ希望通りに履修できましたが、定員オーバーの授業やフィンランド語のみで取れない授業もありました。日常会話程度の英語は元々 できましたが、ディスカッションの授業では自分の意見を周りと同時に言えるまで時間がかかりました。公用語はフィンランド語なので、日常においてのリスニ ングは鍛えられず、普通に生活しているだけでは英語力はさほど伸びません。毎日単語の勉強を行い、授業の宿題で出された20ページ以上の英文を週に1度は 読みました。おかげで哲学や美術系の洋書を躊躇せずに読めるようになりました。

日本の学科の授業は講義がメインで、学生が発言する機会がほとんどないのに比べ、フィンランドの授業では毎回のように意見が求められます。英語が苦手でもフィンランドで生活はできますが、授業への積極的な参加と内容のより深い理解には高い英語力が必要になると思います。

留学生用の語学の授業は、英語はレベルA~Dの授業があり、交換留学生が履修可能なのは簡単なAのみだったので、履修しませんでした。フィンランド語はとても難しい言語だと聞き、諦めました。

異文化交流について

留学生が多く様々な国からの学生と接する機会があり、文化や習慣について互いに話すことが楽しかったです。日本文化や社会、日本人の性格について客観的に考える良い機会となりました。デザインやIT、アニメ、漫画を通して日本に興味を持っている学生が沢山います。

日本人ほど几帳面で、働き者の人種は存在しないように思います。日本クオリティの接客や対応を期待してはいけません。ヨーロッパの 人はいろいろな面で適当です。大学の職員は業務終了の16時になると直ぐに帰ってしまいます。質問があって15時50分にオフィスを訪ねても、既に帰って いる場合があるので、相談がある時は早めに行く必要があります。資料にはよく誤情報があり、Webシステムも完全に正確とは言えません。手続きがうまくい かないことが多いですが、人は親切なので最終的にはなんとかなります。