パシフィックリム プロジェクト

アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン(アメリカ)との共同研究「Pacific Rim」プロジェクト

1981年に初めてアートセンターが実施する夏期研修に参加して以来、約27年にわたる交流を続けてきた本学とアートセンターは、2006年度から「Pacific Rim」プロジェクトを開催しています。

このプロジェクトはデザインの分野で学ぶ学生たちが、環境保護や自然災害などグローバルな社会問題をテーマに取り上げて行う共同研究です。文化、習慣、言語、価値観の違いのなかでリサーチ、ディスカッション、デザイン作業を経て、テーマに対するコンセプトを共有し、デザイナーとして何ができるのかを提言します。研究成果はプレゼンテーションやインターネットなどを通じて全世界に発信されます。

参加者は両大学のグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、テキスタイルデザイン、環境デザイン、情報デザインの分野で学ぶ学生たち各10名です。彼らは毎年交互に各大学で行われる14週間のプロジェクトに参加し、研究成果をまとめます。滞在期間中はその大学で特別に構成された密度の濃いカリキュラムが用意されています。テーマに関連する特別講義、受入校の関連授業への参加のほか、サポート授業として語学実習、官民の協力を得ながらの社会見学など、各国の文化と技術を学ぶユニークなプログラムが工夫されているのも「Pacific Rim」プロジェクトの特徴です。また留学期間中は教員同志も頻繁に開催国を訪問しながら積極的に交流が図られます。

なお、2006年度の第1回「Pacific Rim」プロジェクトは1年間のうちにアメリカ、日本の両ステージを開催しましたが、2007年度からは1年ごとに両校を行き来する形となりました。

[参考]アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン

プロジェクト体験談(2007年度)

テーマ:「サステナブル・デザイン ~ Light, Emotion & the Environment ~」
於 多摩美術大学

今回のプロジェクトで一番学んだことは何か?

他学科との協力や連携で自分のフィールド以上のものを制作することができるということ。


自分が考えたことに自信を持つこと、コミュニケーションの大切さ、チームワーク。温かい友情を得た。人間関係はどの仕事にも影響する。もし人間関係のよいグループがあったら、そのグループはきっとよい結果を残すだろう。笑顔でできるだけ前向きな雰囲気を作ることが大切。


より広い視野を得た、と同時に自分の弱点もたくさん知った。私はまるで、口先だけで大海を語る井の中の蛙のようだった。もっとデザインについて学び、自分の長所を伸ばしていかなければと思う。

グループ作業で大事なことは何か? 自分の意見を主張すること。チームメイトのアドバイスに耳を傾けること。これらは当たり前のことですが、アメリカ人と日本人は全く異なる世界に住んでいるので、それがとても難しかったりします。でも、それ以上に大切なのは、国が違うこと、学科が違うことです。いろんな考え方があって、いろんなデザインへのアプローチがあります。それが新しいアイデアを考えるのにとても役立ちました。


たとえ言葉の問題や考え方の違いがあっても、本当にそれがしたいと思えば、デザインに垣根はないと思う。このプロジェクトの最大の特長は、多摩美術大学とアートセンターのいろいろなデザイン分野の学生と教員に会えることだ。いろんな人たちと影響し合うことによって、以前より自分自身についてよりわかるようになった。

プロジェクトを通して“サステナビリティ” “責任あるデザイン”に対する考え方がどう変わったか?

最初、サステナビリティとはリサイクルのことだと思っていたが、そうではないことがわかった。日本発祥の「もったいない」精神はとても大事だと思う。私もその精神を持っているので、サステナビリティについてよく理解できる。この考え方はもっと広がっていくべきだし、私たちはもっと日常生活で意識的にサステナビリティについて考えるべきだと思う。


ものを作ることと作らないこと。ものを作ることだけがクリエイティブだとは限らない。そういった、考え方を構築することがサステナブルであると感じた。出来の良いシステムを構築することが出来れば、ものを作らずとも済む。また、ものを使い続ける為にはそのものの価値を高める必要もある。

今までその意味さえも知らなかった、聞き慣れない「サステナブル」という言葉がこのプロジェクトを通してデザインを考える上で切っても切り離すことのできない密接な関係だと知りました。初めてこれに気づいたとき、個人的には英語という言語の壁だけでなく、本当の意味でのデザインという壁にも激しくぶちあたりました。一つのデザインが生まれ、終わるまでの大きなサイクルに、関わることすべてが環境にどう影響を及ぼすのかを前もって考慮しなければならないということ。あらゆる環境問題が深刻に進んでいる現在、サステナブルなデザインを考えることは、これからのデザイナーとして大きな課題であり、また社会に対する重要な責任なのだと感じました。

個人的に一番影響を受けた経験は?

グループから受けた影響が大きかった。どういう方向に進むのかとみんなで悪戦苦闘したが、その度に、「サステナビリティとは何か?」という原点に戻り、お互いの意見を聞くようにした。その時間がお互いを理解するのに役立ち、グループをよい方向へ導いたと思う。


アートセンターの学生たちの作業ぶりに影響を受けた。彼らはすごく働くし、自分を表現するのにも長けている。彼らの話はとてもおもしろかったし、多くを学んだ。そして、彼らのプレゼンテーションはとても明確だった。

毎日が新鮮だった。プロジェクトが始まる前に2年半もタマビにいたが、プロジェクトが始まってからは、まったく別物だった。学校で、クラスで、友達や先生たちと毎日英語で会話し、異文化を体験するのは、とてもおもしろかった。


言葉が通じないということだけで、弱気になってしまったり、自分の考えたプロジェクトを進める勇気をなくしたりしたこと。自分の可能性を押しとどめるのではなく、自分の意見を相手に伝えて理解してもらうために言葉はある。だから言葉をもっと積極的に使うことができたら、もっとプロジェクトの形も変わっていったと思う。

インターナショナルなグループで共同作業した経験から何を学んだか?

このプロジェクトでいちばん学んだことはコミュニケーションです。私は英語が下手だけど、静かにしているわけにはいきませんでした。もし静かにしていたら、他のメンバーが私が何を考えているかわからないからです。同じ言語を話す同士でもグループワークは難しいのに、それが異なる言語同士だったらなおさらです。でも、英語を話さなくてはならない環境に身をおけば、なんとか慣れるものだとわかりました。


相手の言っていることすら理解できない、自分の言いたいことも伝わらない、というまぎらわしさから来る大きなストレス。日本語でさえ本当に理解し、論ずることの難しいサステナブルについて、慣れない英語で自分の意見を伝えるということが本当に大変でした。また、デザインに入る前に一個人として周りの人達とのコミュニケーションの大切さも改めて感じることができたと思います。グループでの作業も自分にとっては初めての経験で、意見の違いでぶつかったりもしましたが、お互いの考えの違いを認め、協調性を持って進めることができました。また、他学科の学生との共同作業というのも以前からやりたかったことなのでとても貴重な経験ができたと思います。そして、何よりもこのプロジェクトを通して得た最高の宝物は、同じデザイナーを志している者としてお互い刺激し合える素晴らしい仲間に出会えたことです。

プロジェクトを行う前は、なぜ世界では戦争がなくならないのか理解できなかったが、プロジェクトを行ってみてようやくわかりました。外国の人たちの態度や考えを理解するのは時にとても難しく大変です。母国語でない言葉でニュアンスを伝えるのは本当に難しいのだとわかりました。


デザインに対する考えと進め方について、タマビとアートセンターではすごい違いがあることがおもしろかった。タマビの学生はデザインを展開させることに時間を使うが、アートセンターの学生は成果発表で何がしたいかもっと具体的にすることに時間をかける印象を持った。それが成果物の質の違いになってくるのだろう。いちばん大切なことは自分のデザインに責任を持ち、かつ自信を持つことだと知った。

 

プロジェクト体験談(2008年度)

テーマ:「新しいワークスペースのデザイン ~ Designing the Way We Work ~」
於 アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン

全体の感想

プレゼンでの表現方法、作品の表現手段など、新たに身につけることができました。なにより私も含め全員が自信を身につけたのではないかと思います。


私はパシフィックリムを経験して人との出会いの大切さを教えてもらいました。日本では初めての人と出会うのは当たり前だと感じていましたが、海外での出会いは私にとって大きな感動でした。なぜなら、異国から来た英語もろくに話せない私たちに、出会ったすべての人たちが私たちのことを笑顔で接してくれ、真剣に理解しようとしてくれたからです。自分が逆の立場だったらできるでしょうか。国に限らず自分と違う立場の人たちにそのような接し方ができることが人として大事なことだと知りました。アメリカでのひとつひとつの出会いが私を大きく成長させたと感じています。これからも生活する中で様々な人と出会うでしょう。そのひとつひとつの出会いを私の宝物にしていきたいです。


アメリカに三ヶ月間という長い期間滞在することができ、大変貴重な体験ができました。共同生活、グループワーク、個人ワーク、様々な分野での自分の役割を発見することができました。自分が思ったように上手くいかない場面も多々あり、共同生活も最初はとまどいましたが、5人暮らしなどめったにない機会ですし、今ではアメリカンステージに参加し、一緒に暮らしたメンバーが今のメンバーで本当に良かったと思いました。日本を離れてみて、自分の周りの人たちの性格や人間性なども改めて客観視して見る機会を持てました。そして、アートセンターの生徒が皆優しい人たちだと思いました。困った時は車を出してくれたり、ロスを案内してくれたり、最初から最後まで本当にたくさんお世話をしてもらって一言では言い表せないほど感謝の気持ちで一杯です。


普通の短期留学と違い、グループ制作であるという点もこのプロジェクトの長所だと思います。それは、グループ内でデザインやプロジェクトについてディスカッションすることです。話し合うことと、異文化の障害もありつつ、デザインすることを学ぶこと。どんな仕事(特に仕事となると分業化することも含め)をしても、多国籍の人たちとデザインを一緒に行うことはそんなにない経験だと思うので、本当によかったと思います。

例年であれば「地震対策」、「サステナブルデザイン」と非日常のデザインではなく、どこかで似た課題を経験したことや、見たことがある言わば「許容の範囲内」のテーマでした。しかし、今回は「働き方をデザインする」というシステムを作り上げる上にデザインをするという巨大なテーマでありました。それ故に、理解という共通言語をどのように構築するのか、というのが大変難しく、その分コミュニケーションが必要となり、尚かつ『頭を使う』という基本が必要になってきます。その部分が一番苦労した点です。


アメリカ文化の授業の中で多くのことを学びました。歴史を通じて、アメリカ人は自分がアメリカ人という自国の誇りを今も持っています。一方、日本は自国の誇りをもっている人が極めて少ないと思います。その理由は、日本人は日本人しか知らないということ。一方、アメリカは他民族なので自分以外の人を知り、自分が何者なのかがわかります。それは、とても重要なことです。相手を知ることは私自身も知ることができます。そのような人が増えれば日本はもっと活気がでるのにと思いました。私が社会に出た際には日本という素晴らしい国を世界中にアピールしていきたいです。


プロジェクト全体を通して、精神的にも内容の支えにもなってくれたのは毎日つき合ったアメリカのメンバーや日本のメンバー、指導教員たちでした。プロジェクトの大きな収穫や成功はやはりコミュニケーションをどのようにして、お互いを思いやってやっていくかということが大事なのだと感じました。


テキスタイルデザイン専攻の学生として、テキスタイルは基礎がとても大事なのに、3ヶ月間テキスタイルデザインをしなかったことはとても苦痛でしたが、日本語が通じない土地で自分のコンセプトを人に伝える為にスケッチや資料集めをたくさんしたことは、コミュニケーションの大切さを痛感し、努力をすれば自分のことをわかってくれるということを私に気づかせてくれました。このことに気づいた後でテキスタイルの基礎や技術を学ぶのは、広い視野でその情報を吸収し、たくさんおもしろいアイデアが浮かぶ気がします。

多摩美とアートセンター

多摩美とアートセンターの違いは、機材や授業内容もそうですが、一番の違いは企業や就職活動に対する学生たちの意思の違いだと思います。アートセンターの学生は、多くの作品について企業を意識して制作し、常に流行のリサーチを怠りません。さらに学生はプレゼンテーションの際ペイントしてよい壁を分け与えられるので、一人一人のプレゼンテーションが非常に個性的で見ていて飽きることがありません。そこで思ったのは、アメリカ人というのは興味を持てないことに関してはばっさり切り捨てる性格で、日本人は自ら興味を持とうとする性格だということです。アメリカ人はみんな聴衆を飽きさせないように努力し、工夫したプレゼンテーションをするのです。


アートセンターから是非タマビが取り入れてほしいと思うのは機材です。レーザーカッターや3Dプリンターの有無は学生の作品の完成度、効率、作品の可能性の広がりといった様々な面で影響があると思います。機械に頼らず手と自分の身体感覚でモノをデザインするということが大切だというのは理解していますが、2年生以上が使えるなど何らかの工夫をすることで解決できると思います。

多摩美はアートセンターより自由な作品制作ができる気がしました。自分でじっくり考えて作業をすることは多摩美のいい所だと思います。


アートセンターが多摩美から取り入れた方がいいと思う点は、作品の最終形体だけでなくそのデザインするプロセスの過程も重用視することです。またグループワークについてももっとアートセンターのカリキュラムの中に取り入れた方がいいのではと思いました。それは、リムの授業が終わるとすぐに向こうの学生は帰ってしまう人が多く、グループで一緒に作業する時間を重用視した方がいいのではと思いました。

英語力

英語力については、やはりあるに越したことはないと思います。ただ、なくても三ヶ月後にはみんな必ず英語力が伸びていると思うので、「コミュニケーションを取りたい」という強い気持ちがあれば大丈夫だと思います。ただアメリカに着いた最初の一ヶ月はできないと辛いものがありました。


プレゼンテーションには英語力が必要ですが、私生活は少しの英語力でなんとかなります。むしろ英語のニュアンスを肌で感じようとする姿勢の方が大事です。

英語力に関しては、生活にも特に苦労することなく過ごせたと思います。それは、プロジェクトに参加しているアートセンターの学生がちゃんと伝わる英語で丁寧に喋ってくれたり、配慮してくれたおかげだと思います。そして、三ヶ月経つと相手の言っていることもほぼ理解でき、それに対する反応を返せるぐらいまでにはなりました。それはやはり、このプロジェクトが個人の短期留学ではなく、グループで行う留学のおかげだと思います。

本学への留学を希望している方へ

多摩美術大学の国際交流について

国際交流便り