2010年度春期講座

講座番号
1112 A-C

連続講座 日本美術を語り継ぐ

日本美術の歴史をその生涯をかけて見続けてこられた研究者の方々を迎え、その経験のなかから未来に向けて語り継ぎたい日本美術の世界についてお話しいただきます。
日本美術にまつわるさまざまな発見・事件に、実際に立ち会われた思い出なども伺えると思います。

開講日・講座内容・講師

A 4月24日(土)
上原和が語る
玉虫厨子は甥の聖徳太子を偲ぶ推古天皇の念持仏でした。太子の父用明天皇を祀った鵤寺罹 災後に、聖徳太子奉為の法隆寺が建立された際に寄進されるとともに、金堂の建築も玉虫厨子にならっています。
B 5月29日(土)
芳賀徹が語る
浅井忠は1900年、46歳でパリ万博を機に渡欧し、多くの友人と交流します。ビングのアール・ヌーヴォーとの接触やグレ・シュル・ロワン村の滞在での多くの作品等、《河畔洋館》前後にみる豊かな体験を探ります。
C 6月26日(土) 7月3日(土)
※講師の都合により、開講日が変更となりました。(4月9日現在)
※すでにお申し込みをされた方には、申し込み締切日(4月10日)以降、「詳細のご案内」をお送りいたします。
青木淳が語る
興福寺の無著像に出会ったのは10歳のときです。かわいがってくれた祖父を亡くし、子どもながらに喪失感を味わいました。
そんなとき、初めてこの彫刻と向き合いました。なぜか、そこに祖父の面影が重なりました。
時間 A B C いずれも 13時~14時30分
場所 上野毛キャンパス
受講料 1回2000円(ただし全3回受講の方は5000円)
定員 各70名
申し込み締切 A・4月10日、B・5月12日、C・6月9日(すべて必着)
案内役 青木淳[美術史家、本学准教授。専門は中世美術史。『遣迎院阿弥陀如来像像内納入品資料』他]
上原和[美学・美術史家、成城大学名誉教授。著書に『トロイア幻想』『法隆寺を歩く』他]
芳賀徹[比較文学者、岡崎市美術博物館館長。近著に『詩歌の森へ』『藝術の国日本』]

コラム 日本美術を語り継ぐ 青木淳

さて、最後のシリーズはまず上原和先生から。先生は有名な法隆寺の「玉虫厨子」研究の第一人者。仏教伝来から法隆寺の創建にいたる背景を、ギリシャ以東のユーラシアから日本まで広く実地を踏査して、独自の文化交流史を展開してこられた。『斑鳩の白い道のうえに』はまずご一読いただきたい名著。
芳賀徹先生。初めて先生とすれ違った時、長身の先生に「サバ」と言われた。?印で頭がいっぱいになった。後で『絵画の領分』の著者である芳賀先生だと教えられた。蕪村・漱石・浅井忠…日本人の「粋」をひもとくキーマンを、天衣無縫、縦横無尽に語ってこられた人だ。(*本当は、サヴァ~(Ça va?)はフランス語で「どうだい?/元気?」の意味)
そして最後は、私。いつか我が子に話してみたいのは、運慶の話。もの言わぬ美術や仏像がいつしか人の心に沁み入っていたことをお話ししてみたい。嬉しい時や悲しい時もどこかその通過点にその人と作品があったことを思い出しながら、「日本美術を語り継ぐ」これにてひとまず、一区切りといたしたいと思います。