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表現する葦 Reeds Expressing

会期:2011年10月29日[土]→ 2012年12月4日[日]

吉田哲也
 吉田哲也(1964〜2005年)は多摩美術大学彫刻科卒業、東京藝術大学大学院彫刻専攻を修了しました。在学中から独特な彫刻作品の表現世界を目指し、積極的に作品制作に取り組みました。それらは、おおよそ一般的にイメージされる豪奢な彫像やモニュメントのような素材や技法ではなく、トタン板やハンダ、針金、石膏片といったありふれたものを、折り曲げたり、接合したりという簡便な加工や設置の小さな作品がほとんどです。抽象的でミニマルアート的な作品からスタートしますが、次第にあたたかみや表情のようなものを感じ取れる優しい作品を、小さな存在に凝縮するように制作していきました。無駄を廃して精度を上げるという機能主義とも異なり、むしろ中庸や隙がありながらも、完成度の高い作品となりました。

ダヴズ製本所のプレート

(左上) Untitled 2000年 プラスター 撮影:早川 宏一
(右上) Untitled 1993年 トタン、ハンダ 撮影:早川 宏一
(左下) Untitled 1996年 針金 撮影:早川 宏一
(右下) Untitled 1995年 針金 撮影:森岡 純

若林砂絵子
 若林砂絵子(1972〜2008年)は多摩美術大学大学院美術研究科を修了後、渡仏しパリ国立高等装飾美術学校、パリ第1大学パンテオン=ソルボンヌ校造形芸術をそれぞれ卒業しました。その間、早い時期から美術家たらんとする意識が高く、また意欲的に作品制作を続けました。油彩に始まり、渡仏後は版画や立体作品などの幅広い創作活動に果敢に挑戦しました。それは作品の完成度以上に、作品の生成こそが表現の真髄とばかりのストイックさで、自ら美術のあり方に、激しくそして厳しく向かい合うプロセスが感じ取れます。


(左上) Proliferation 2004 - 2005年 樹脂、グラスファイバー
(右上) Untitled 2003年頃 テラコッタ
(左下) ドローイング
(右下)Untitled 2005 - 2008年 版画

 この二人のアーティストは、美術家としての多くの可能性と期待を持たれながら急逝しました。寡黙さの中に彫刻としての厳しさと鋭さをもつ吉田哲也と、意欲的で苦闘の跡が増殖的なエネルギーとなった若林砂絵子は、制作過程と作品の傾向に異なるベクトルがありながら、美術に対峙する姿勢の核には、ひたむきな造形表現への追求があり、規制の美術の枠組みや方法論にとらわれない柔軟性を有する、強くたくましい信念と制作姿勢を貫き通しました。美術家としての経歴は弱々しくとも、それはまるで葦のように、しなやかさとたくましさを持ち合わせています。パスカルの「考える葦」ではありませんが、それぞれ二人の中にある美への探求は、大きく時代や社会との呼応と深度を高めていく中で「表現する葦」の如き仕事を遺したように思えます。それは傑作や巨匠という尊大な特異点ではない、まさに美術への真摯な葛藤や懐疑の確かな痕跡として、我々の思考を触発し、共鳴と勇気を与えてくれる機会となるでしょう。

カタログ

表現する葦 吉田哲也・若林砂絵子(作者別・2冊セット) 表現する葦 吉田哲也・若林砂絵子(作者別・2冊セット) 表現する葦 吉田哲也・若林砂絵子
(作者別・2冊セット)


価格:1500円
2011年発行、26.0×21.0cm/各48ページ

  • 主 催 多摩美術大学美術館
  • 協 力 藍画廊
    WAKABAYASHI STUDIO
  • 休館日 火曜日
  • 入館料 一般 300円(200円)
    大・高校生 200円(100円)
    ※障がい者および付添者、中学生以下は無料
    ※( )内は20名以上の団体割引料金