お問い合わせ美術館概要スペシャルコンテンツ関連イベント展覧会紹介開催概要トップページ 四国霊場開創1200年記念  祈りの道へ −四国遍路と土佐のほとけ− 2014年11月22日(土)〜2015年1月18日(日)多摩美術大学美術館


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監修者より<日々遍路>

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2014年10月5日(日)

須崎市・笹野大日如来像の思い出(上)

笹野の大日如来坐像の写真 撮影:大屋 孝雄  早いもので、今回のポスターになった須崎市笹野の大日如来像と出会ってから十年がたった。あれは暑い夏の日で、世話役の方にお堂の鍵を開けていただくと、それまで真っ暗だったお堂のなかに明るい日が差し込み、その奥深くで台座に安置されたに仏像の目が光ってみえた。古いいまにも壊れそうな狭い堂内で礼拝し、崩れかけそうなお像を須弥壇から移させていただいたとき、それは四十センチ足らずの小さな仏像であるのに、どこかどっしりとした風格を感じた。日の下であらためてお像を拝見した時、一見して鎌倉時代初期の仏師運慶の流れをくむ作者の手になる作品だとわかった。とっさに「なぜこの場所の、こんな小さなお堂の中でこんなに貴重な仏さまが」という言葉が浮かんだ。正直なところ真夏なのに、その緊張感のある仏像をまえにして、冷や汗が滲んだ。いろいろな想いが脳裏をよぎったが、そのときは言葉を飲み込んだ。

(青)

2014年10月4日(土)

山頭火の『四国遍路日記』

山頭火の『四国遍路日記』  放浪の俳人山頭火は昭和十四年の秋に最後の四国遍路に出ている。太平洋に南面した土佐の地に入った山頭火は、東端の札所である室戸岬の最御崎寺と津照寺へ立ち寄ると、続く金剛頂寺、そして安田町の海辺より北方の峰上にある神峰寺などは国道より「遥拝」して過ごしている。山頭火の道行きは、僧の姿はしているものの八十八ヶ所を巡拝することでも、また宗教者として多くの人々の贖罪のための遍路行でもなく、そうした意味においては山頭火のそれは旅を棲家とし、歌を詠むばかりの歌遍路であった。(山頭火『四国遍路日記』参照)

(青)

2014年10月3日(金)

滅びゆくものの美しさ ―歓喜寺の古仏群―

歓喜寺の古仏群の写真

 「壊れているからといって価値がないなんていうことはないんですよ」とお話したのが今から十年ほど前のことだっただろうか。仏像が壊れているのは別に誰が悪いわけでもなく、それどころか拝観させていただくたびに、「よくこの長い時間をお守りになられましたね」とお話をする。以前にも高知県が指定した仏像のことで「こんな壊れた仏像でも文化財としての価値があるのでしょうか」と尋ねられたことがある。文化財というのは完形品でなければいけないとか、きれいに彩色が残っていなければいけないなどということはない。必要なのは、そこにかつて人がいかに祈り、想い、考えたのかという記憶を読み解くきっかけとなるようなものがあるか否かということではないだろうか。
 歓喜寺は室戸岬の西端の室戸市羽根町にある。海辺から少しばかり山手に入った集落だ。これらの古い仏さまは、今須弥壇の片隅にひっそりと立て掛けられている。確かに破損も進んでいるが、一体一体に近づいてよくみると、微笑みを浮かべたかつての表情が浮かび上がる。虫に食われて細くなった仏さまの口元に紅がさしてあるのを見たとき、近所に行くのに口紅をちょっとさして出かけるおばあちゃんの妙な色気を感じた。(本展では中央の阿弥陀如来像が出陳されます。室戸市指定文化財)

(青)

2014年10月2日(木)

大学美術館と調査

調査中の写真  大学に付属する美術館が近年目立ってきた。多摩美美術館は比較的早く2000年に多摩センターにオープンした。基本は教育施設の一部ということもあって、今回の入館料も300円!(何回でもいらしてくださいね。)この度の展覧会にあたっては学内の教員と担当学芸員が協力して調査をおこなってきました。相棒は淵田雄学芸員。彼は東アジア美術の研究者でもあります。今回も高知での調査や地元の方からいただく情報を元に、今も最新の成果をさぐりながら、それに関わる出品作品の交渉をまだがんばっています。お楽しみに。

(青)

2014年10月1日(水)

監修者より

 このたび高知県、四国八十八ヶ所霊場会をはじめとする関係寺院、博物館、研究機関の御後援をいただき、多摩美術大学で「四国霊場開創1200年記念 祈りの道へ−四国遍路と土佐のほとけ−」を開催させていただくことになりました。また仏像や遍路に関わる資料を提供してくださった所蔵者の皆様に心より御礼申し上げます。
 この展覧会は、近年、高知県地域文化遺産共同調査・活用事業プロジェクトや多摩美術大学による科学研究費の調査で確認された仏像・仏画などを中心に、高知県という特定の地域に根ざした「遍路文化」とその背景を紹介することが大きな目的となっています。このコーナーでは、本展の監修を務めさせていただく私から、本展について皆様へ、折々のメッセージを記させていただきたいと思います。どうかよろしくお見守りください。

多摩美術大学 日本美術史
青木 淳
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