多摩美術大学 創立75周年記念、多摩美術大学美術館 開館10周年記念  唐招提寺 金堂荘厳 展 -平成の大修理 よみがえる天平の彩り-
2010年12月4日(土)-2011年1月30日(日)
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唐招提寺金堂と10年間の完全解体、そして新たな発見

唐招提寺 金堂正面写真

 奈良、西の京で1250年以上の歴史を刻む唐招提寺。境内には天平様式として唯一現存する金堂が悠久の時を越えて伝わっています。その金堂が「平成の大修理」ともよばれる10年に渡る全解体を終え、落慶法要が営まれたのが昨年2009年秋。唐招提寺の金堂史上もっとも大規模となったこの修理の中、今注目の集まる古建築の彩色調査も行われ、創建当初のきらびやかに彩られた金堂の姿が浮き上がりました。
 本展では、この調査成果を一堂に集め、古代寺院の姿を物語る天平の彩りと文様をご覧頂きます。創建期にまで遡る金堂装飾について、その痕跡が残る部材(国宝)の他、細密な文様図を記録した白描図や鮮やかな彩色復原図から天平の薫風をお楽しみください。またCGを駆使し、白描図と彩色復原図を金堂内画像と組み合わせた映像も展示。テクノロジーと文化財の出会いも見所のひとつです。
 さらに、これまでの考古学調査によって発見されたせん仏や瓦など貴重な遺物のほか、創建当初の鴟尾に倣って新調されたものと同型の復原鴟尾も出品。唐招提寺を舞台にした天平と平成の匠の技が競演します。
 多角的に唐招提寺金堂荘厳へと迫る本展へ是非、お運びください。



展示内容

・白描図・彩色復原図・創建当初部材(国宝)
 本展では、この彩色文様を中心とした創建当初の金堂荘厳(本尊を安置する建物をおごそかに飾ること)する有り様を展示すると共に、彩色調査と復原にあたった奈良教育大の大山明彦准教授のご協力を得て古建築における彩色研究手法も公開し、古美術研究の重要な一側面として紹介いたします。具体的には、部材から直接記録された文様原寸の白描図(約50点)・彩色復原図(約20点)そして彩色が施された復原立体的部材(3点)の出品となりますが、彩色の痕が残る金堂創建当時の貴重な部材(国宝・7点)も見所の一つといえるでしょう。

  
■ 身舎支輪裏板
作品画像作品画像作品画像
部材(国宝)彩色復原図白描図
画像提供:奈良県教育委員会


 
■ 大虹梁側面図 宝相華
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白描図彩色復原図
画像提供:奈良県教育委員会


 
■ 支輪子 小花文
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白描図彩色復原図
画像提供:奈良県教育委員会


 
■ 扉八双金具下彩色
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白描図彩色復原図
画像提供:奈良県教育委員会


・考古遺物
 また、完全解体修理の機会で得ることができた知見として金堂基壇の発掘遺物である、古瓦や磚〈せん〉、金銅装飾具など(約16点)を展示。また、唐招提寺が建つ以前にあった、新田部親王(にたべしんのう)邸宅と推測される古瓦の他、唐招提寺戒壇付近から出土した磚仏もご覧いただけます。これらを通じて金堂創建と鑑真和上の在世〜遷化前後に関わる時代を読み解く材料とし、天平文化の「息吹」をご来館者に伝えたく考えております。

 
■ 古瓦
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鬼瓦複弁八弁蓮華文軒丸瓦(上)
均整唐草文軒平瓦(下)
写真撮影:小林宏道


・CG
 加えて、CG技術を用いて放送メディア等の一線で活躍されている東洋大学教授の多田光利氏の協力の下、調査から得られた情報を基にCG技術を連動させた展示も行います。CG制作につき特筆したいことは、唐招提寺にご許可をいただき、金堂内の動画撮影を行った点です。この成果は、金堂建築と彩色文様を画面上でリンクさせた「分かりやすい展示」の工夫であると共に、学術資料への寄与とCG技術が文化施設において役割を果たす新たな役割を探るものと位置づけられるでしょう。

 
■ CG 展示の一部
金堂画像と絵画記録情報(白描 図・彩色復原図)を視覚的にリンクさせ、
立体的な情報とします。
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作品画像


・再現鴟尾(しび)と金堂模型
 さらに、完全解体に際して新造された再現鴟尾を展示すると共に、1/20の金堂模型(長岡造形大学所蔵)も出品。唐招提寺金堂の構造と全体のイメージをより間近に伝えます。

■ 鴟尾
作品画像
再現鴟尾
画像提供:奈良県教育委員会


関東における古建築展示の意義、そして新しい分野への取り組み

 古建築は質・量共にその中心が関西にあり、関東では古建築に関わる文化財の修復・再現技術を取り上げる機会に恵まれていません。それ故、首都圏において本展覧会を開催する意義は大きいと言えるでしょう。
 また、本展は今後更に進展が期待される建築彩色やCGを用いた展示を試み、ユニバーシティミュージアムとして学術的貢献を果たします。



多摩美術大学創立75周年、多摩美術大学美術館移転開館10周年記念事業、平城遷都1300年記念として

 本展は本学の創立75周年と当館の移転開館10周年の記念事業として計画しているものですが、本年2010年は平城遷都1300年の記念すべき年と重なっています。現在、東京においても平城遷都1300年の広報が行われており、2010年には今まで以上に奈良の文化や美術に注目が集まっています。そのメモリアルイヤーに本展を開催することは、本学にとって誠に光栄であり、本展が平城遷都1300年の記念事業のさらなる充実と成功の一助となれば幸いです。


多摩美術大学

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