MUJYO TYPES

馬場 一萌

作者によるコメント

新しい文字の在り方を考え、文字に時間軸を与える実験。
複数のパーツを回転させ、その残像で文字が浮かび上がる。
意味を持たない図形の集合が文字・言葉に移り変わる瞬間、また、文字が解体され図形に変わる瞬間、その狭間を垣間見ることができる。
浮かんでは消えてを繰り返す、常には見えない“無常”な文字。
平家物語“祇園精舎”の英訳をテキストとして引用した。制作した映像との共通イメージとして“無常観”に着目し、テキストを映像化している。

担当教員によるコメント

残像は網膜の内側で引き起こされる現象ですが、この作品ではそれがひとつの視覚的な現象として前向きに用いられています。作品を構成する要素は非常にシンプルなものですが、それが作品の切り口を鮮やかなものにしていると思います。錯覚は単なる認識の間違いではなく、そこにないものを見る人間の能力であるかもしれません。そして人が感じ取る形のあいまいさ、そのことの儚さは、映像そのものの起源に繋がっていくと思います。回転速度の変化、ブラウン管を用いた展示方法も、見せ方の上手さというだけでなく、作品にさらなる奥行きを与えたのではないでしょうか。

非常勤講師・庄野 祐輔

  • 作品名
    MUJYO TYPES
  • 作家名
    馬場 一萌
  • 作品情報
    技法・素材:回転と残像、映像インスタレーション