PASSAGE

作者によるコメント

日々の暮らしの中で出会う心に迫る瞬間、そんな一瞬を切り取り形に留めるという点で、どこか似ている写真と短歌。自ら撮影した写真と現代の歌人の短歌を掛け合わせ、二冊の写真集を制作した。一冊は光沢紙を使用した大型のハードカバー製本、もう一冊は和紙を使用した手のひらサイズの和綴じ本とし、印象に変化をつけた。デザインは短歌の世界を崩さないようにシンプルに抑え、紙や糸などの素材面に優しい風合いが出るよう気を配った。

担当教員によるコメント

島田君の卒業制作にあたっては、何よりもとても上手な写真を撮る人だなという印象から始まった。彼女がレンズを向けるさりげない日常に対象の美しさと、そのアングルの切り取り方、フレーミングの確かさ、そして表現技術など、どれもが過剰を抑えてシンプルで美しく見事だった。その写真に心惹かれた短歌を添わせたタイポグラフィのシンプルなレイアウトが、心地良い緊張感のある写真集を生み出した。器としての造本デザインも極めてシンプルで無駄が無く、内容を引き立てるものにふさわしい姿をしている。

非常勤講師・小泉 弘