sacrifish いけにえライン

鈴木 雄介

担当教員によるコメント

樹脂で固めた魚をオモチャのカートに乗せて、作者はさまざまな想いを投影しようとしている。死んだ魚を回転させることの意味とは?ただひたすらに幾条にも連なった軌道上を封じ込められた魚が機械的に回り続けている姿は、生と死を対比させるような救いの場面や、機械的に動くことへの悲哀を越えてしまって何も語らず、淡々と歯車のきしみを発し続けているような気がする。作者の興味は死というものの現実なのか、対極的な生への渇望に向かうのかあやふやさを感じてしまった。むしろ、この作品を通じて作者自身こそが自分のとるべき態度を観察しようとしているようにも思えてしまうのである。この作品には少し距離をおいた客観的な眼が存在する。おそらく作者は鑑賞者に対して、カートで巡っている魚に対してどのように感じてもらってもいいと言うだろう。それは創作を放棄したわけではなく、彼なりの問題提起だととらえていい。

准教授・森脇 裕之

  • 作品名
    sacrifish いけにえライン
  • 作家名
    鈴木 雄介
  • 作品情報
    作品形態など:大姉(金魚)、樹脂、歯車、ギアボックス、木材、電池、電池ボックス等
  • 学科・専攻・コース