風、雲、海、そして 山 Ⅰ・Ⅱ

李 内馨

担当教員によるコメント

韓国の留学生として3年次からの出発である。日本画の技術を学ぶことを主眼に吾が大学に入られたが当初より30号ぐらいの大きさのキャンバスに一匹の鳥が足を上げその動静を感じさせる太い糸の線表現は鳥の形態を生き生きとさせた緊張感のある作品には驚かされた。
「万物の根本にあるのは自然だ」と彼女は言う。風、雲、海、山、その自然のあり様を形態として一本の糸と墨とキャンバスで表現した風景に描いた上に、網を幾重にもかける。それは様々な角度から見る視覚によって糸で描いた、山と海の稜線は重ねた網で自由に揺れ動く。それはあたかも実在する風景がそこにある、風が動き、雲が動き、海が揺れる。キャンバスの素地が広大な空間へと変貌する、常に己が何から発想したのか、原点に立ち戻りそのすべを計る、この制作姿勢が心の思いを深く見据えることになっているのだろう。
紙を焦し、焦し残した墨上の線、新たな動きへと魅力的な形態を残す。韓国で培ってきたものを土台に、日本との違いをより一層感じながら自己の触発と刺激を求めながら、これからもより一層自然から学ぶ本筋を忘れないでほしい。それが自分の原点なのだから…。

教授・中野 嘉之

  • 作品名
    風、雲、海、そして 山 Ⅰ・Ⅱ
  • 作家名
    李 内馨
  • 作品情報
    技法・素材:韓紙、布、網、糸
    寸法:H1450×W2800mm H1121×W2910mm
  • 学科・専攻・コース