生と死

碓氷 一馬

担当教員によるコメント

巨大な顔面が150号の画面を覆い尽くしている。有無を言わせず観る者を圧倒する極めて印象深い作品である。碓氷はこれまでも幾度となく自画像を描いてきた。何れも、目一杯に顔を捉えた構図とモノトーンの色調が特徴で、表現に対する作者の並々成らぬこだわりが感じられる。それらは一貫して静寂を保ち、人の表情に隠されたこころの機微を、確かに表していたと思う。本作は、近しい親族との死別が描く動機となっている。臨終を看取る枕元で、生と死を分かつ瞬間、作者はえも言われぬ深淵な世界を見たのではないか。人間にとって永遠のテーマが、この作品に込められている。

教授・武田 州左