千鳥ヶ淵

堀田 明里

担当教員によるコメント

学部時代の作品群の中で、彼女には様々な名作があります。どこにでもある有り触れた情景がなんとも不思議な牧歌的表現とは違う柔らかなほのぼのとした作品へと変貌する。彼女にしか持ち得ない色彩と独自の視覚が、大胆な構図を生み出すのだろう。丁寧な筆の動き、一つ一つ綴りながら楽しんでいるように思える。今回の卒業制作もしかり「花がゆっくりと揺れる様」正にその通り、ゆったりとした膨らみと暖かさがある、3×6版の4枚作品の大作である。一面に満開の桜、見える花弁、一つ一つ描ききる、そして全体の木の持っている生命感が柔らかな、目指しを感じる為の濃淡がこの大きな木のスケールとなっている。欲を言えば樹間の空の空気感に変化があれば良かった。淡々と綴り続けてもらいたい。彼女にしか生まれて来ない作品群が出来ることを期待しています。

教授・中野 嘉之