鈴なりの枇杷

三木 綾子

担当教員によるコメント

たわわに実った枇杷の実が、夏の終わりを告げるかの様に午後の風に揺れている…。画面中央に大木を据え、ほぼシンメトリーの構図ながら、決して退屈になっていないのは、実感を忘れずに対象に迫った、三木の描写力が勝っているからに他ならない。重なり合う葉の表情や枝の動き、背景に見える洗濯物や、建物の手摺り。ディテールに対するこだわりは、作者がこの場所に対して抱く愛情のなせる技だ。日常の中に漂う何気ない生活感。まどろむような一隅を、大画面に飽きさせる事なく見事に切り取った作者の力量を讃えたい。

教授・武田 州左