隠しすぎて、なくさぬように/お隣りさんとお隣りさん

栗山 優里

担当教員によるコメント

落ちていくのか、あるいは漂っているのだろうか。でも、画面いっぱいに広がるほおずきは確実に静止しているのである。つまり動きの一瞬をカメラで捉えるように、風景は止まっているのだ。それでもなお画面全体から感じられるこの気配は何なのだろう。一方の作品のほおずきの陰に見え隠れする少女は、作家自身の在りし日の記憶なのだろうか。あるいは今も持ち続ける少女性に潜むある種の幻想なのか。さらに、無数のほおずきだけを描き続けた作品は、一つ一つがくり返しの惰性ではなく、それぞれに思いを込めながら丁寧に描かれている故、そのシンプルさの中に、栗山が言う「懐かしき恐怖に出会う毎日」
を感じ、そこにはいない「隣の誰か」の気配が、鑑賞者を包み込むのである。

教授・小泉 俊己

  • 作品名
    隠しすぎて、なくさぬように/お隣りさんとお隣りさん
  • 作家名
    栗山 優里
  • 作品情報
    『隠しすぎて、なくさぬように』
    技法・素材:油彩、キャンバス
    寸法:H1303×W1620mm
    『お隣りさんとお隣りさん』
    技法・素材:油彩、キャンバス
    寸法:H1818×W2273mm
  • 学科・専攻・コース