Beautiful Midnight

大村 雪乃

担当教員によるコメント

文房具シールのドットを点描感覚で画面上に貼付け、都会の夜景やお花畑を再現しようとしている。大村は、誰もが目にしたことがある既製品である文房具シールを使うことで見る者に親近感を与え、大衆化された誰もが共有し楽しむことができる窓口を作品に設定しようとしているのではないか。もし大村がそのようなコンセプトで作品をつくっているのだとしたら、ひとつの疑問がわいてくる。はたして、誰もが共有し楽しめる作品であることを決定する者とは、作家なのか大衆なのか。作家の意図どおりに大衆に受け入れられる作品もあれば、そうならない場合もある。大衆のことなど何も考えずにつくられた作品が優れた芸術として大衆に受け入れられることもある。いったい何が真実なのかあいまいで答えを導きだせない。にもかかわらず多くの者(大衆)に好まれる作品は確かに存在する。当然、大村はこのあいまいな世界の出来事を認識しているに違いない。そして認識した上で、大衆的でありながら優れた芸術作品を生み出そうとしている。それはきっと困難な道のりである。その困難に立ち向かう大村のアーティストとしての姿勢に、私は心うたれるのである。

准教授・栗原 一成