Hummingbird

井上 美歩

作者によるコメント

化粧品売り場を見てみると、整然と商品が並んでいる。しかし逆に商品をはっきり見せ過ぎないことが、人に積極的に見させてしまう。清潔感と秩序の世界に曖昧さを持ち込むことで、窮屈な選び方から、もっと感覚的に楽しく選ぶことができるような化粧品を提案した。
モロッコの市場からは、何かに出会えそうな予感がする。それは整頓されすぎていない曖昧さによるもの。その世界観をもとに、市場の見え方の前期研究から、もっと楽しく選んでもらえる化粧品を表現しようと考えた。

担当教員によるコメント

これは化粧をするという行為に含まれるさまざまな心情を、店舗での化粧品の在り方に着眼して新しいアプローチから提案している。注目すべきはその発想のポイントで、まず購買の瞬間に着目し、市場と現在の化粧品売り場の構成の違い、消費者が購買の瞬間を決めるきっかけをモノの並びから解明しようと試みた事。いつもの決まりごとから一歩踏み出した買い物をしたときの、何かが変わるような心躍る瞬間をポイントメイクの化粧品から体験できる提案である。数回で使い切る量の化粧品と同じカラーのリングの構成で、全てを独特の緩やかな並びに配置した。付属のリングが冒険を後押しするというユニークな発想も素敵である。プロダクトの先にある豊かな心情にユーザー自身が気づくきっかけを丁寧に表現した作品だ。

准教授・大橋 由三子