傍らにいるわずかな流れのように

佐藤 早百合

担当教員によるコメント

上面を斜めに切り取られた矩形の石が彫り込まれ、青みがかった4枚の板ガラスが階段状に角度を変えながら嵌め込まれている。深度に伴い青が深まる、大理石の肌色とのコントラストが美しい。シンプルな仕立てだが労作である。佐藤さんは、彼女が魅かれる風景を切り取り、石に置き換えることを主題に制作を重ねてきた。灯台、沈下橋、棚田、簡素化の傾向は窺えたが、描写に徹する意志の方が強く感じられた。清流をテーマにしたこの作品では、川の流れも、水その物も姿を消している。観察から始まり、写し取る過程で彼女の魅かれている要素だけが掬い取られ、ガラスという新しい素材と石に置きかえられている。自然から学ぼうとする素直な姿勢が、自然に彼女を彫刻の本質へと向かわせている。

教授・村井 進吾

  • 作品名
    傍らにいるわずかな流れのように
  • 作家名
    佐藤 早百合
  • 作品情報
    技法・素材:大理石、ガラス
    寸法:H420×W950×D490mm
  • 学科・専攻・コース