まちを織る

鈴木 理子

作者によるコメント

愛知県一宮市の商店街再生計画。古くから街に根付く織物産業をきっかけとして、祭のイベント性をもった既存の要素の利用、アーケードという建築的要素の提案から、新たなまちの再生の在り方を提案する。単体ではただの糸だった経糸と緯糸は、人によってお互いが織り込まれることによって新たに一枚の織物の面となる。人の手の暖かさをもった一枚の生地は、様々にかたちを変える。大きな一枚の織物を織るように、まちを・空間を・人を織る。

担当教員によるコメント

完成よりもエスキスの方がよほど楽しいらしい。とても変わった学生だ。建築のみならずいわゆる作品とは、紆余曲折の試行錯誤を経て、出せる答えは一つ。それも決して何かの真理のように、ただ一つの汚れのない答えに到達した!などというのとはおよそかけ離れた、寧ろ進化の樹形図のように、自然淘汰を経て進化を重ねるごとに、幹が分かれ枝葉が伸びていく。建築における答えとは、文字通りの枝葉末節とも言えるその隣の枝葉より少し進化した枝葉の先に過ぎないのかもしれない。少し先んじれば、周囲の枝葉の広がりがよく見えるようになる。その枝葉も少しは伸ばせるのではないか?鈴木里子のその原動力を共有しようと分析すればこんなことなんじゃないかと思う。

教授・松澤 穣