きつねの ふみくら

高野 友美

作者によるコメント

東京都中央区には68の稲荷神社がある。しかし、どれも高層ビルの谷間に隠れるようにして建てられ、その存在は忘れ去られている。かつては心の拠り所であり、人の集まる場であった稲荷神社。この失われた2つの面を取り戻すため、古本の貸し借りができる小さな図書館のような本棚(=ふみくら)を設置する。400年前からある稲荷神社を人々の記憶に永く残すための提案。

担当教員によるコメント

東京の都心、中央区に点在している稲荷に着目した提案。現在もきれいに維持されているが、住民に対して昼間人口が多いことから住民以外の人にも感心を持ってもらうこともねらいのひとつである。既存の建築に手を加えることなく、本を介したつながりを持たせるためのしかけをデザインすることで稲荷をつなぐネットワークを実現している。作者にとって馴染みの土地であるが、改めて何度も歩き回って調査を重ねている。いずれも敷地が狭いことから、小さいスペースで展開可能なシステムとしてデザインし、それぞれの場に合わせて変化できるように考えられている。極めて身近なところからテーマを見つけて、十分な調査をした上で、地に足が付いたデザインとしてまとめているところが高く評価できる。

教授・岸本 章