Two63（トゥー・ろくじゅうさん）, パパ・ユーア クレイジーの装丁

作者によるコメント

ウィリアム・サローヤンの著作『パパ・ユーア クレイジー』の装丁。63章の短文で構成されているこの小説は、簡潔な言葉で綴られながらも深い意味が込められている、滋味溢れる小説です。現在は文庫版での流通が一般的で、それではこの小説の良さが伝わりにくいと考えました。より楽しむため、また､「本とは形態なのか、それとも内容なのか」という疑問を追究したく思い、本を章ごとに分割し、装丁に特徴を持たせた日本語版と、基本的な構造の英語版を各63冊装丁しました。密かに「これが1章ごとに届いたら素敵じゃないか」と考え、郵送のための封筒も作成しました。

担当教員によるコメント

文庫本の短い63の各章を1冊ずつに仕上げるという着想。63冊が同じなのはサイズだけで、全冊異なるタイポグラフィとデザイン表現、そして製本方法。それらを読後のイメージから9冊ごとに虫ピンで標本箱に収めるというアイデア。構想のそれぞれが、単独で卒業制作に値するほどの発想の重層と完成は見事であった。今年度卒業制作にブックデザインを選んだ学生たちは、全期間毎週一人も欠席せず全員が顔を揃える快挙！だったが、植木君が毎週見せる制作へのがんばりの刺激が、皆の気持ちを強く牽引し続けてくれた。3年前期からどの課題もユニークな発想と表現へのひたむきさに、いつも「大きな伸び幅」を感じさせてくれた。4年間の努力に見合う素敵な進路を得た。身体に気をつけて思いっきり羽ばたいて欲しい。おめでとう。

非常勤講師：小泉 弘